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くわぽんのつれづれ日記

思うが侭、つれづれに書いています。ほぼ、毎日更新中!!

再生した地球にて(2) 第一章

第一章 準備、日本の王城にて

私はルナツー、ルナシリーズの二番目に造られたコンピュータです。
一度滅んで再生した地球上では、最高の頭脳です。

地球は、戦争で事実上人が住めない環境になってしまいました。都市部は重金属汚染が進み、郊外は不発弾などの戦争の足跡が人の行く手を阻みました。そんな世界で人類は文明を失ってしまった。
人々は、学院の前身である組織の助けを借りて、何とか生き延びました。しかし、生き延びる事が出来たのは、全人口の一パーセントにも満たなかったのです。多くの文明と文化、技術を失った人類は、七百年以上の時をかけて学院が再生した地球に住み始めました。それが、約三百年前。先文明最後の暦では、今は西暦三三二十八年十月七日。

私達ルナシステムはムーンの実働頭脳で、大きく四つの部分と五つの機能からなっています。
部分とはルナコア・ルナブレイン・ルナシェア・ルナストレージの四っつです。
ルナコアはいわゆる純粋な電子頭脳で単独で思考を行います。
ルナブレインは私、肉体を持ち、頭脳を含め九割九分有機体で構成されています。
ルナシェアは電子頭脳ですが、ルナブレインの肉体をルナブレインと共有する存在です。つまり肉体を持つ電子頭脳。肉体からの無数のフィードバックをうけますが、私ルナブレインと違ってホルモンなどの精神に影響を与える物質の影響を受けません。
ルナストレージはルナの三つの部分とムーンが共有する記憶領域です。
ルナシステム一つで、地球上の全ての動植物の記録を百年分は保持出来ます。ムーンはその遙か上を行く容量と処理能力を持つコンピュータですが、ルナシステムと違い、純粋なコンピュータなので、人間の感情などは理解出来ません。
ルナシステムは、当初、人類や動物の習性や感情自己認識などを理解する目的で構築されました。
今では、純粋にムーンの実働部隊になってしまったように感じています。
とはいえ、ムーンは自発的な思考能力は持っていません。全てユールの指示によるものです。

さて、本日、白のユールは失恋しました。
人との交わりを断ってきた彼女にしては、珍しく積極的に関わった人物との別れを経験してきたのですが、残念ながら、感傷に浸っている暇はなさそうです。

「例の生き物、移動が早いですね。移動の習性は狼に近いようです。巣に戻ってくれているのが唯一の救いですね。」
ユールは私の兄弟が殺された時の記録とムーンの監視記録を確認しながら呟いた。
「三体以上の群れで移動しているようです。確認されている個体数は十五ですね。」
ユールの情報に私は一つ提案をした。
「では、あの停滞型シェルターのコードネームは『ネスト』にしましょう。」

事の起こりは十日ほど前、ヨーロッパにある停滞型シェルター、つまり内部の時間の進行を遅らせる機能を持つシェルターが開く兆候を見せた事に始まります。停滞型シェルターは時間の流れが外部と異なる為、電力を供給している内部からしか開ける事が出来ません。しかし、兆候は確認出来るので、私の兄弟は、手助けを行う数人のアルテミスを連れて、この地下にある構造物の入り口までの洞窟を掘り、内部で発生した新しい病原菌や外部で発生した新しい病原菌、動植物の影響を緩和する為に人間の力では道具を使わない限り壊せないような封印処理を施して開封を待っていました。
ところが、開封直後、内部から現れた数体の異形の生物によって数時間に及ぶ戦闘の末、殺されてしまったのです。
その異形の生き物は、その数時間後、封印を素手で突破して外の生き物も補食し始めました。
私達ルナシリーズは素手でも並の軍隊なら相手に出来ます。つまり、異形の生き物は人間より遙かに強いという事になります。
人口が激減し、まともな戦闘能力を有しない今の人類ではひとたまりもありません。

ユールは、
「では、この異形のものは、『ライカンスロープ(狼男)』と呼びましょう。ルナ、予想出来る特徴を教えて下さい。」

ブレイン:『コア、予想出来る特徴の列挙。シェア、賛否の判断』
コア:『3、2、1。遺伝子操作、ベースは人間』
シェア:『賛成』
ブレイン:『賛成』
「人間をベースにした遺伝子操作による生き物であると判断します。」
コア:『知能を有する可能性百%、シェルター内で一定期間生き延びた。』
シェア:『賛成』
ブレイン:『賛成』
「停滞型シェルター内で一定期間生き延びた事から高い知性を持っています。」
「高い知性があるのに何故いきなりおそってきたの?」
シェア:『2、1。シェルター内の食料が不足してる可能性86.4パーセント』
コア:『疑問』
ブレイン:『賛成』
「シェルター内の食料が不足していたのでは無いかと想像出来ます。」
ブレイン:『列挙再開』
コア:『遺伝子操作の内容は動物との融合』
シェア:『疑問』
ブレイン:『疑問』
コア:『遺伝子操作の目的は人類の強化』
シェア:『賛成』
ブレイン:『疑問、方向性が不明』
「遺伝子操作の内容と方向性は不明な点が多すぎます。」
「あの形態になるような遺伝子変化の予想は可能?」
シェア:『過去のシミュレーションに該当無し、シミュレーションに要する時間はおおよそ三十年』
「残念ながら、時間がかかりすぎます。過去のシミュレーションでは該当有りません。サンプルをとる方が早いですね。」
「もしも、マイクロウィルスによる遺伝子変化だとすると、周りの生き物や地域住民にも影響が出る恐れがありますか?」
シェア:『マイクロウィルスによる感染の可能性を否定』
コア:『否定12パーセント遺伝子操作方法による』
ブレイン:『否定4.1パーセント遺伝子操作方法による』
「マイクロウイルスによる感染の可能性はあると考えます。ただ、比較的確率は低いです。使われた遺伝子操作方法によります。」

・・・

ルナシステムは原則多数決なので、私の頭の中は非常にうるさい。普段は私、ブレインが身体を動かしているので、感情を表に出す事も出来るのですが、多数決が始まると、感情を表に出すのは難しくなるのです。

私達が得た結論は、
① 異形のもの(ライカンスロープ)は、遺伝子操作された人間である。
② 遺伝子操作の目的、方法は不明
③ 感染の可能性があり、感染した場合、次の世代から影響し始める可能性が高い。
④ 繁殖力は高い可能性がある。
⑤ 戦闘力はかなり高い
⑥ 敵対する場合、武装が必要(刀だけでは不足する可能性がある。)
⑦ 詳細な調査には検体の確保が必要
⑧ 住民の保護は住民の中の衛兵だけでは無理
⑨ ナノマシンによる変異の可能性は非常に低い(傷、病気からの回復は生物的回復力に限られる)
といった内容になった。

「先ず、ルナフォー制御のオートキャノン四門を、近くの町に設置しましょう。」
とユールが決定した。
「オーバーテクノロジーです。良いのですか?」
オートキャノンは、月で開発した中ではレベルの低い兵器でも、地球上には一度も存在したことの無い非常に高度な技術が使われていて、開示規制機器の部類になっています。もっとも、月の兵器で開示規制に引っかからない物は無いので、仕方が無いのですが、忠告が義務づけられているので、一応忠告しました。
「構いません。あと、貴方のオートキャノンも二門準備して下さい。」
オートキャノンの特徴は、地中を含む半径一キロメートルを特定の対象から保護出来る護衛支援兵器だと言う事です。敵対物の規模、種類、強度に応じた攻撃が可能で、弾丸を地上に残さないという特徴が有ります。しかし、どうしても、発射後には有害なイオンやオゾンが僅かに残る事と、月からのエネルギー供給が必要です。また、制御が非常に難しいので、ルナシステム一つに付き、四台までの運用に制限されています。
未知の敵から町を護るには最適な選択である事は間違いないでしょう。

「後、私には、『いつもの』を貴方は・・・自分で判断して下さい。」
『いつもの』は今のところ確認されている中では、ユールだけが使える武器です。自身の持つ何らかのエネルギーを凝集するレンズの役割を果たすもので、ユールの発するそのエネルギーの効果で、生体を直接死に至らしめたり、回復を促したり出来る謎の機械です。仕組みは簡単なのですが、通常、二週間以内に自壊してしまう使えない奴です。そのため、持ち出し制限はありません。私の予想では、ナノマシンを照射しているのでは無いかと予想しています。
「では、ニトロガンの使用許可を」
ニトロガンは、液体指向性爆薬を使った拳銃です。薬莢を持たないので連射性が高く、反動は大きいのですが、軽いのが特徴です。ただし、普通の人が最大出力で撃つと良くて手首を痛め肩を外します。最大装填弾数六十発、最大連射六十発、ライフル弾も二十発まで装填でき、バレルとスコープと換装すればライフルとしても使えます。
「電子制御モードで許可します。」
電子制御モードというのは、ルナシリーズ以外が引き金を引けない(電子頭脳制御)という事です。
「そこまでする必要があると考えているのですか?電子制御モードのニトロガンはオーバーテクノロジーです。」
電子制御モードは、敵に武器が渡った場合の事を心配しているという事を意味します。それだけ敵が強く、私が負ける可能性を心配しているという事でもあります。
「ルナ、油断は禁物です。そして、もう一つの懸念があります。」
「懸念?」
「今回の問題、解決に時間を要した場合、私の人格が入れ替わる可能性があります。」
「黒のユールにですか?いつ頃?」
「おそらく、二週間以内です。」
「・・・まずいです。黒のユールに任せると、彼は、この新しい生き物を地球の住人として認めてしまう可能性が高いです。」
「・・・それだけではありません。もう一つの新しい人格が発生する可能性も否定出来ません。」
「まさか」
「時々音楽が聞こえるんです。私が生まれたときと同じように、黒のユールが音楽を聴かせているような気がします。」
「色は?」
「おそらく赤です。」
「最悪です。町が破壊されない事を祈ります。」
赤のユール。ムーンが予想したユールの兄弟。その特徴、性別、性格から、それぞれの色で表現されています。赤のユールは非常に破壊衝動の強いものとして予想されています。人類の死も動物の死もありとあらゆる生物の死を顧みずに暴れる可能性を持つ激しい存在。
白のユール、彼女は人との交流を避けていましたが、基本的に全ての人類が大好きで、人類に害を及ぼすものを排除しようとします。
黒のユール、彼は基本的に全ての生き物を同じように考えている節があり、造られた生き物も全く区別しません。環境の激変は嫌いますが、緩やかな淘汰であれば容認してしまいます。
新しい人格は、未知の部分が多すぎて判断が出来ません。

ムーンに必要な指示を出したら現地に向かいましょう。乗り物の手配もお願いします。

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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2013/05/14(火) 12:34:55|
  2. 再生した地球にて
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