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くわぽんのつれづれ日記

思うが侭、つれづれに書いています。ほぼ、毎日更新中!!

再生した地球にて 第十章

第一〇章 いろいろな答え

結局、何も思いつかなかった俺は、お兄さん達と行ったお店に戻っていた。
俺の顔を覚えていたマキちゃんが対面卓に案内してくれた。目の前には親父さんの無骨な顔があった。
「どうしたんだい、しょぼくれた顔して、女にでも振られたのかい?」
と言いながらお酒を出してくれた。俺は
「俺飲めないんだ。お茶が良いかも・・・」
と笑顔で返したつもりだったが、酷く顔がゆがんでいたらしい。親父さんは、「一杯飲んだらお茶を出してやるよ。」と真顔で返してきた。
俺は、出されたお酒をちびちび舐め始めた。親父さんは、
「何があったか話してみな。なぁに、こんな商売だ、大事な部分はみんな忘れてやるから安心しな。」
と行ってくれた。俺は、何から話して良いのか判らず、でも、嬉しいのか悲しいのか、涙が止まらなくなり、泣きながら親父さんにいろんな話をした。親父さんは、俺の話が終わるまで、「うんうん」と言いながら聞いてくれた。
もしかしたらかなりまずい内容も話してしまったかも知れないが、親父さんは眉一つ動かさずに聞いてくれた。俺の話が終わると、親父さんは
「で、お前さんはどうしたいと思っているんだい。」
と聞いてきた。
「それが・・・判らなくなっちゃったんです。」
俺は、項垂れた。
すると、親父さんは、
「俺には何となく結末は見えちまってるんだがぁ。そうだなぁ、助言にならねえかも知れねえが、俺なら、今夜その女を抱いちまって、『帰ってきてくれ』って言うかな。誰かの幸せじゃねぇ、自分と自分の子供達の幸せだけを考えるかな。俺なら、な。」
と言って、にかっと図体の割にかわいい笑いを見せてくれた。
俺は、
「俺には無理かも、でも、そうだね、何となく結論が出たような気がする。ありがとう。親父さん。」
俺は立ち上がってお金を払おうとしたが、親父さんが、
「今日は俺のおごりだ。上手くいっても行かなくても明日の昼はここで食ってくれ、それでいい。」
と言ってくれたので、俺はお礼を言って店を出た。辺りは暗くなり始めていて、もう、とっくに夜の店を開けなくてはいけない時間になっていたが、お店には『準備中』の札が下がっていた。
よく見ると、開店待ちと思われる列が出来ていた。俺の為に店を閉めてくれていたんだと気が付いて振り向くと、親父さんとマキちゃんが並んで立っていて、
「また明日な。」
と笑顔で見送ってくれた。俺は、深くお辞儀をしてお店を後にした。
後ろからマキちゃんの「タケルちゃん上手くいくと良いね」と言う声が聞こえた気がした。

宿に帰ると、食堂でユールとルナが待っていた。
「先に夕食を済ませましょう。」
ユールはぎこちない笑顔で席を勧めてくれた。
俺たちはいつになく静かな夕食を済ませた。
部屋に戻ると、ルナは、「私は隣の部屋で休んでいます。」と言って隣の部屋に入り扉を閉めた。

「ユール・・・俺は・・・やっぱり結婚したい。」
「・・・結婚で無ければいけませんか?離婚もしていただけ無い?」
「・・・ああ・・・」
「・・・これからお願いをします。もしかしたら、最後のお願いになるかも知れません。この返事は私の明日の発言に大きな影響があると思って下さい。良いですか。」
「・・・判った。」
「私を・・・抱いて下さい・・・。」
俺は目を見開き絶句した。
「多分、タケルが思っているとおりの意味です。」
俺は出来るだけ冷静になってしばらく考えた。ユールも黙って見守ってくれた。
「もしも、子供が出来たら・・・俺の知らないところで生んで育てるつもり・・・なんじゃないか?」
ユールの性格からして、おそらくさっきの遣り取りで結婚は無理と考えたはずだ。なのに今「抱いてくれ」というのは明らかにおかしい。
「私達は短い間に深く理解し合えたみたいですね。」
ユールは明確な答えをせずに、おそらく肯定した。
「それは・・・出来ない。」
俺は、言い終わった後、奥歯が折れるかと思うほど噛みしめた。苦しかった。
「・・・判りました。私の返事は明日の審査の後にさせて下さい。・・・我が儘でごめんなさい・・・。」
言い終わった後、向かい合ったまま、しばらく黙ってどこか遠くを見ていたユールは、突然、明るく手を叩き。
「喉が渇きました。ここの主人にハーブティーを持って来て貰いましょう。ここのハーブティーは私の見立てでおいているんです。絶品ですよ。」
と言った後、天井に向かって、
「と言う事で、ムーン、手配をお願いします。ルナにも声をかけて!」
と言うと、天井から感情の無い無機質な声で
『了解しました。』
と返事があった。びっくりしていると、床の一部に穴が開き、華奢に見えるが簡素な彫り物の意匠を凝らした小さな卓と椅子がせり上がってきた。
また、しばらくすると、ルナが隣の部屋から現れ、宿屋の主人が良い香りのお茶を運んで持って来た。
宿屋の主人は、お茶を一式卓に並べ、一通り注ぎ終わると、静かに退出した。
「ここにも先文明の技術?」
とユールに質問すると、
「はい。私達が生活しやすいように。お風呂も沸いて出てきますよ。」
と明るく笑った。
その後、普段通りの雑談をしながらお茶を頂いた。ほのかに甘く、非常に美味しかった。
しかし、ふっと思い出して気になったのでユールに質問してみた。
「この後ヨーロッパに行かないといけないって言っていたけど、何処に何しに行くの?」
ユールは、しばらく考えた後、つらそうな表情で答えた。
「停滞型シェルターが一つ扉を開きました。シェルターは扉が開く前に予兆があるのでルナフォーが対応に当たっていたのですが、手伝いの三人のアルテミス共々殺されました。」
「なっ。ルナフォーってルナより弱かったの?」
「いいえ、互角か・・・成長していた分だけルナツーより強かったかも知れません。」
「!!」
俺は思わず立ち上がった。
「人間を含めて自然界の動物でルナを不意打ち出来る、あるいは互角以上に戦えるモノを私は知りません。私はまだ確認していませんが、ルナの戦闘時の記録は全てムーンに保管されています。ムーンの分析では十分に成長したルナが二人いれば勝てただろうという事です。そして、攻撃してきたモノは間違いなく、生き物だったそうです。」
「・・・一大事・・・なんだね・・・」
「おそらく、何らかの理由で人間の遺伝子に手を加えた結果、凶暴な魔物を作り出してしまったんだろうと言うのが、今の予想です。しかし・・・もし、私と同じ再生能力を身につけていると・・・対応出来るのは私しかいません。・・・それに、今自由に動けるのも私とルナツーだけなんです。今は、ムーンが空の上から問題の起きている一帯の全ての動く生き物を監視しています。」
「それで、まだ時間的な余裕はあると?」
「周囲の動物が影響を受けていますが、一番近い町まで二十キロ有ります。今、その町では、学院の指導で城壁などを急ごしらえで作っている最中だそうです。問題なのは、停滞型シェルターから出てきたという事は、おそらく繁殖能力も持っているだろうという事です。また、未知の病原菌も恐ろしい問題です。・・・遺伝子を操作するような研究をしていた停滞型シェルターですから・・・。」
「大丈夫なの?・・くらいしか言えない自分が情け無い。」
「ルナフォーが持って行った機器が破壊される前まで収集していた情報では問題のある物は見つかっていないそうです。」
「聞いたら心配になっちゃったよ。」
「心配は無いですよ。ユールは死にませんし、ユールの一番側にいる私は一撃で死なない限り直ぐに治療してもらえるユール以外では一番安全な立場なんです。」
とルナが無表情で答えた。
何となく安心は出来なかったが、ユールがどうしても行かなければいけないと言う事は理解出来た。
その後、なんと言う事の無い会話が続き、今日は早めに寝ようという事になった。
ユールは簡単な片付けをしていたので、俺は先に布団に入った。
うとうとと眠りかけたとき、ユールが俺の寝ている布団に入ってきて、後ろから抱きついてきた。そして、俺の背中に顔を埋め、「お休みなさい」と静かに言った。
俺も、「お休み」と答えると深い眠りに落ちていった。

朝起きたとき、俺はユールを抱きしめるような格好になっていた。ユールはまだ眠っているようだった。寝顔はまだ幼さが残る少女だった。こんな娘が俺の想像も付かない苦労をしているんだと思ったら、感極まって腕に力を入れて抱きしめてしまった。
「うっ、タケル、痛い。」
とユールが目を覚まして言った。俺は、
「あっ、ごめん。」
と力を緩めた。
「おはようございます。・・・ひょっとして、寝顔を見られちゃいましたか?恥ずかしいです。」
とはにかんだ表情がまたかわいかった。
「おはよう。しっかり堪能させて頂きました。」
と返事をすると、ユールはふてくされたような表情になり、枕を俺に押しつけて自分は布団から出て行ってしまった。
俺は、色々考えながらしばらくぼーっと枕を抱いていたが、やがて起き上がって着替えを始めた。
ユールは相変わらず着替えが無いので、椅子に座って何かを待っているようだった。
やがて、宿の主人が昨晩とは違う香りのするお茶を持って来た。宿の主人は
「目覚めのお茶です。」
と言って、昨晩の茶器を片付けて新しい茶器を手早く並べ、一通り注ぎ終わるとそのまま出て行った。
それと同時にルナが半分寝ぼけた表情で寝間着のまま部屋から出てきて、
「おはやうござぃます。さくばんはおたのしみれしたね。」
と寝ぼけた声で言ってきた。
「おはよう。いや、楽しんでないから、ぐっすり寝てたから。」
と俺は返していた。
「おちゃをいたらきまふ。いたらいたらおおふろにいってきまふ。」
寝ぼけているルナは珍しい。
「そうして下さい、王の前で失礼の無いように寝汗を落としてくると良いでしょう。」
とユールは笑顔で言った。そして、
「ルナは、普段気が張っているので、安全な宿ではいつもこんな感じなのですよ。」
と説明してくれた。その表情はいつものユールのものだった。寝顔とは対照的な大人びた表情。どちらが本当のユールなんだろう。そんな事を考えながらお茶を頂いた。

その後、俺は何故かルナとお風呂に入っていた。隣の部屋がお風呂場に変わっていたのだ。ルナは、俺の背中を流してくれたが、俺が背中を流そうとすると、「変な事をされそうなので結構です。」と言って逃げた。変な事をするつっもりなんて無かったのに・・・。

その一時間後、俺たちは王の前にいた。
「では、タケル、貴方の口から水車の仕組みとその利用方法について思っているところを教えて下さい。」
王の声が謁見の間に響いた。王の隣にはユールがいた。
俺は、先日お兄さんにユールが説明していたときの事や、教授に教えて貰った事などを思い出しながら一所懸命に説明した。
説明が終わった後、王はユールに向かい、
「賢者様は彼と旅をされて来たそうですね。私情が入るようならご意見を伺わない方がよろしいのでしょうか?」
と問いかけた。
ユールは、少し俯き、やがて王に向かって顔を上げ、
「私の個人的な感情で物を言えば、融資はして欲しくありません。」
ときっぱり言った。
俺は、背中が寒くなるのを感じた。「だめかも知れない。」そう実感した。しかし、
「しかし、私の立場から物を申すのであれば・・・、」
ユールは、喉を詰まらせながら続けた、
「少し、昔話になります。
人類は、地球の環境を自分たちの住みづらい環境にしてしまい、唯一、再生手段を提供出来た学院に地球の将来をゆだね、自分たちは、宇宙植民地惑星や停滞型シェルターで約七百年を過ごす事を選択しました。一部の者は、移民宇宙船で生存可能性のある惑星を目指しました。
いずれの環境でも、水は貴重な資源で、川や噴水などを造る事は決して無く、水を利用した技術が人々に知られなくなるのに殆ど時間を要しませんでした。
これは、学院が想像したよりも致命的な・・・致命的な事態だったのです。
しかし、学院には学院の決まりがあり、その技術を伝える事が出来ませんでした。
私達は、待ったのです。待っていたのです・・・水車を復活させてくれる人を・・・」
ユールは泣いていた。
「ごめんなさい。これ以上は・・・」
と言い残してユールは走ってその場を退席してしまった。

王はしばらくの沈黙の後、
「貴方も罪な人ですね。賢者様があそこまで感情を表出されたのを見た事がありません。・・・しかし、賢者様には申し訳ありませんが、賢者様には・・・失恋して頂きましょう。」
と言った。
俺は何のことだか判らず、ただ、王をみあげていた。
「実は昨晩、悠太殿が来たのです。」
「えっ?」
「悠太殿は、もし賢者様が融資をするべきで無いと言ったら、多少の不備なら融資してくれと言って来たのです。」
「どうして・・・」
「賢者様は一つのところに長く止まる事が出来ません。姿が変わらない為、本人や家族が酷い目に遭うからです。想像して下さい、羨望や異形のものに対する恐怖から化け物をにるような目でよく知っていたはずの、仲の良かった友人が自分や家族に牙をむく、そんな場面を。」
「・・・簡単には想像出来いない・・・」
「賢者様は何度もつらい目に遭い、結果、放浪する事を選んだのです。移動を繰り返し、自分を深く知るものは家族だけというそういう生活を選んだのです。・・・多分、他に道は無かったのでしょう。人と関わらない事は人間である以上無理なのですから。」
「それと、ユールの失恋とはどういう関係が?」
「賢者様は、融資がおこなわれ無ければ・・・貴方が水車を建てる事を諦めれば、一緒に放浪を続ける道もあるかも知れないと、その僅かな望みにかけたかったのかも知れません。」
「・・・ユールは、その事を俺が知れば、水車作りを俺が諦めてしまうかも知れないと・・・そう思ったと・・・だからあんな・・・っ。」
「今から逃げる事は許しません。貴方に融資します。金貨で二千枚。これが裁定の結果です。・・・ユールと話したければ、外にいるルナに案内して貰いなさい。では、退出して結構です。」
王は、態とと思われるくらい事務的な態度をとった。
俺は、深く礼をすると退出し、ルナにユールのところまで案内して貰った。
「ユール・・・俺・・・俺は・・・」
ユールは城の天守閣で外を見ていた。風に髪が流され、綺麗にたなびいていた。
「その様子では、融資をうけられたのですね。良かった。」
「ユール」
「私は・・・失恋してしまいました。でも、御陰でタケ・・・貴方の事は吹っ切れました。私以外の人と幸せになって下さい。
貴方は成長しました。この僅かな時間で・・・だから、貴方は幸せな結婚が出来ると確信します。」
「もう、タケルとは呼んでくれないの?」
「もう呼びません。でも、約束がありますから、またいつか・・・貴方の子供の顔を見に行きます。その時、私は貴方との約束を一つ果たします。」
「約束って?」
「覚えていないなら、その時の楽しみにしておいて下さい。・・・いつになるかは判りませんが、その時結婚していなかったら怒りますからね。しっかり子供の顔を見せて下さい。・・・私が授かる事の無かった貴方の子供の顔を・・・。」
そう言って、ユールは俺に右手を刺し出した。
俺は、右手で握手した。その手はいつも通り、生まれたての子供のように柔らかく、すべすべで暖かかった。
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2013/04/06(土) 12:01:10|
  2. 再生した地球にて
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