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くわぽんのつれづれ日記

思うが侭、つれづれに書いています。ほぼ、毎日更新中!!

再生した地球にて 第九章

第九章 一先ず謁見?

翌朝、ルナに叩き起こされた。
「二人とも起きてください。彼女達が気が付きました。」
ルナは、急いでいる様子も無く、淡々と俺とユールを起こしていった。
「簡単に状況は説明しておきましたので、驚かせる事はありません。適当に急いで準備して下さい。」
ルナの指摘の的確さはよく知っているが、なんていい加減な急かし方なのだろう。
俺とユールは、身なりを整えて、急いで隣の部屋に向かった。
整えられた布団の上に二人の少女が並んで座っていた。
「・・・!お父様!!」
へ?
二人の視線はユールに向かっていた。
「ええ。無事で何よりです。」
ユールの答えに、驚きながら、両者を代わり番こに見てしまった。
「お父さま?」
俺は、相変わらず間抜けな。
答えたのはユールだった。
「はい、男の私の娘達です。」
「なっ」
それならそう言ってくれたらもっと協力もしたのに。とは思ったが、協力できることもそんなに無かったか。その時、少女の一人、幼い顔をした方が言った。
「兄さんが、切られて!」
ユールは、落ち着いた声で応えた。
「悠太は、けがをしたようですが、致命傷では無いとルナは判断しています。とりあえず、最近担ぎ込まれた人がいないかを探しましょう。」
ルナは、昨日見つけた楽器を持って来て少女達に渡した。
「雨に当たっていましたが、修復しておきました。」
「兄さん・・・」

俺は、場違いだとは思ったが、一応恐る恐る切り出した。
「・・・あのぉ~。出来れば紹介して貰って良いかな?俺はタケル、須塔武だよ。」
「すみません。この二人は、鈴木音羽と涼音です。私の娘達です。」
ユールの紹介に合わせて二人が「音羽です。」「涼音です。」と自己紹介した。
「とりあえず、王城に向かいましょう。衛兵詰め所がこの都で最も情報が集まる場所です。」
ルナが提案して、皆が首を縦に振った。

ユールとルナはいつものローブと杖の出で立ち、涼音ちゃんはお兄さんの楽器を大事そうに抱えていた。
王城は直ぐそばだった。宿を出たら直ぐに見えた。城の周りは堀と塀に囲まれており、建物はあまり見えない。
ユールによると、先文明時代にこの地にあった城を復元した格好になっているらしい。中身はかなり進んだ技術を使っているらしいが、何というか、荘厳ではあるが華奢な印象のある不思議な建物だ。
「あの高いのが天守閣です。いわゆる展望台ですね。本物は男の私も見た事はありません。生まれる前に焼け落ちてしまったそうです。」
「面白い建物だねぇ。」
「昔の日本では珍しくない様式なのですが、今はこの城だけですからね。伝統も何も失われてしまうと修復は困難です。」
ユールはどことなく悲しそうだった。城門は橋を渡ったところにあってその直ぐ内側に衛兵の詰め所があった。
ユールとルナがブローチを見せると兵士は、
「賢者様、良くいらっしゃいました。」
と挨拶をした。ユールは王城では賢者様と言われているらしい。
ユールが最近担ぎ込まれたけが人がいないか聞くと、男性が一人担ぎ込まれ、まだ目を覚まさないと教えてくれた。今、学院の医者が面倒を見ているそうだ。
城の医療室にいるというので、急いでそのけが人のところに向かった。

そのけが人は目当ての人物だった。
音羽ちゃんと涼音ちゃんは「兄さん」と言いながらすがりついた。
ユールは、ルナから杖を受け取ると、その杖をお兄さんの身体の上にゆっくり置いた。すると、杖が身体にゆっくり溶け込み始めた。
「えっ」
俺は、驚いたが、驚いているのは俺だけだった。これって普通の事だったっけ?
「この杖は、治療の為の道具でもあるんですよ。ユールの身体の中の機械と一緒です。話しは聞いていますよね。」
とルナが教えてくれた。
「あぁ、聞いた。身体に溶け込むほど小さい機械なんだ・・・」
「実際、そんなに小さくはありません。身体の隙間に無理矢理入っていって治療をしながらまた集まって来ます。」
「よく判らないけど・・・」
ユールはお兄さんの服を脱がした。肩口から大きな傷があったが、とりあえずはふさがっている様だ。ユールはお兄さんの身体に広げた両手をのせ集中し始めた。
すると、傷が盛り上がり、瘡蓋が溶ける様に消えて傷はすっかり無くなってしまった。
「さすがに、出血が多くて、少し、脳に障害があるようです。修復するのに広範囲の記憶を必要とするので時間がかかりそうです。」
とユールが言った。普段は汗一つかかないユールの額にうっすらと汗がにじんでいた。つらそうだ。
何もする事が出来ず、ただ待っているだけの時間が過ぎていった。
ルナが何度かユールの額の汗をぬぐった。
音羽ちゃんと涼音ちゃんはひたすら祈っていた。

そんなとき、扉が開いて数人が入って来た。
衛兵の制服に似ているが色違いを来ている人が四人と上等な着物を着た女性が一人だった。
ルナが
「王様、ご無沙汰しています。」
と軽くお辞儀をした。
「王様?」
俺は素っ頓狂な声を上げてしまった。
「ユールは集中しています。今はご挨拶申し上げられません。ご容赦下さい。」
とお辞儀をしたルナに対して王様は、
「構いません。けが人が運び込まれていた事は知っていましたが、まさか、悠太殿だったとは、連絡出来ず申し訳ない事をしました。」
と返した。
思いがけない謁見にどうして良いか判らずぽかんとしていると、ルナは、
「こちらは須塔武。融資の依頼に来ました。」
と説明した。俺は慌てて、
「須塔武です。初めまして。」
と何とか返す事が出来た。ところが、ルナに
「申し訳ありません。礼儀のなっていない男で、気を悪くしないで下さい。」
と言われてしまった。
王様は、にこやかに笑いながら、
「良いのですよ、そんなものです。」
とルナを諭す様に返事をした。俺は混乱していた事もあり、何の遣り取りなのかよく判らなかった。
「今は、お詫びをしようと参ったのです。後ほどまた。」
とだけ告げて、王様は退出してしまった。
ユール以外、皆頭をたれた。

それからさらに一時間ほど経って、ユールがため息をついた。まるで今まで息をするのも忘れていましたと言う様なため息だった。そのため息が合図であったかの様に杖がお兄さんの身体から徐々に姿を現し、一本の杖に戻ると同時にお兄さんは目を開けた。

しばらくぼうっとしていたお兄さんははっと気が付いた様に起き上がり、
「ここは?」
と言って辺りを見回し、
「お父様、涼音、音羽。」
と驚いた様に立ち上がろうとした。ユールはその動きを宥める様に押さえ、
「慌てて動かないで。」
と優しく声をかけた。
「貴方は十日ほども眠っていたのですよ。」
と言った。
「そうだ、俺は、盗賊に切られて、通りかかった隊商に助けられたんだ。その後は・・・。音羽、涼音、奴らに酷い事されなかったか?」
「大丈夫。私達も気が付いたらお父様に助けられていたの。」
と音羽が答えた。
「・・・そうか・・・」
お兄さんは複雑な表情をした。単純には喜んではいけないと言うような、そんな顔だった。

静寂をルナが破った。
「先ほど、王様がお見えになりました。」
ユールは、少し考えてから、
「では、先ず謁見しましょう。」
と言った。

ユールが謁見したいというと、直ぐに王様の前に通された。王様は御簾の中から降りてきて、ユールに挨拶した。
「賢者様。よくお越し下さいました。悠太殿の件は気付かなかった事とは申せお知らせ出来ずお詫びのしようもありません。」
え~っ、王様がユールに頭を下げてるぅ。
ユールは、
「私も思うところがあって伝えなかったのです。気にする必要はありません。」
明らかにユールは偉そうだ。
俺は、小声でルナに
「ユール、偉そう。」
と告げると、
「当たり前です。初代国王ですよ。」
と返された。・・・忘れてた。そうだった。

その後、俺が融資の依頼できたこと、一緒に旅をしてきた事など、さしたる雑談も無しに淡々とした会話があった後、王様から
「では、結論は早いほうが良さそうですね。今日中に手続きをして下さい。明日審議しましょう。賢者様と供にまた城へおいで下さい。」
と有り難い言葉を頂いた。

俺たちは手続きをする為にまた衛兵の詰め所に戻った。手続きはユールの助言もあり悩む事もあまりなく出来た。融資の希望金額は、よく判らなかったので王様におまかせすることにした。

帰り道、丁度お昼時だったので、どこかでご飯を食べようという事になった。お兄さんが、トウキョウ広場と言われているところの近くに行きつけの店があるからという事で、そこでご飯を食べる事になった。

「トウキョウって時々聞くけど、何のことなの?」
俺が聞くと、ユールが
「先文明後期の王都の地名です。特に東京広場は昔、東京駅という交通の要所があったんです。そこから陸路で日本中に行ける鉄道という交通機関があったんです。」
「へぇ、今と比べると、どれくらい広さが違うんだろう。人が住んでいた地域の広さって。」
「今、王都を含めて六つの町を中心に十万人弱の日本人が生活しています。先文明の後期では、王都の周辺だけで百万人以上の人々が生活していました。」
「十倍?以上!!」
「日本全体では一億二千万人以上の人が住んでいた時期があります。」
「そんなに・・・」
「私もその頃には生きていませんが、日本の大きな四っつの島と周辺の小さな島まで殆どの陸地にはあまねく人が住んでいたようです。」
「・・・想像も出来ないね。どこに行っても人がいるって事だよね。」
「今の日本の町のある地域は、町の間も含めて人の住んでいない地域は無かったといわれています。」
「・・・今は、港町と早瀬川の間には人が住んでいないよ・・・。」
「それだけ人が多かったのですね。」
ユールと俺の話を皆興味深そうに聞いていた。
「ここがおすすめの店だよ。この店の舞台も使わせて貰った事があるけど、料理はこの辺りではここが一番だね。」
お兄さんはまるで自分の店にでも入るように扉を開けて堂々と入っていった。
店は、十席ほどの卓が無作為に並べられており、厨房の側に対面卓の席がいくつかと、一番奥に舞台があり、大きな楽器がいくつか置かれていた。
お兄さんは、常連らしくお店の人が何も言わなくても、『俺の席』と言わんばかりに指定席と思われる舞台がよく見える端の方の席に座った。舞台は昼間は誰もいなかった。

お兄さんは、
「親父さん、初めての人連れてきたから献立表出してくれよ。」
と厨房に向かって大きな声を出した。
すると、奥から献立表を持った女の子が現れ、卓に持って来た。
「今日のお勧めは豚のシェフにおまかせランチです。」
シェフ?ランチ?聞き慣れない名前に目を回していると、ユールが
「このお店は外国の言葉を使うのが好きなようですね。献立表には日本語のルビが振ってありますが、シェフはこの店で調理する人の中で一番偉い人、ランチは昼食です。今の日本では外来語は殆ど使われませんからね。」
と丁寧に教えてくれた。
俺は胸をなで下ろしながら
「知らない言葉が飛び出してドキドキしちゃったよ。」
と言って笑った。
お店の女の子は、
「悠太さん達以外は一見さんが二人ね。誰なの?」
と親しそうに話し始めた。
「ああ、父と父の連れだ。」
「お父さんなんていないじゃない。私顔知ってるよ。」
「あぁー。」
とお兄さんは困った顔をしてから。
「父の妹と父の妹の連れだ。」
と言い直して内輪の失笑をかった。
ユールは、
「ゆりです。お見知りおきを、」
と言って会釈した。
「タケちゃんの妹かぁ。そう言えばにてるかなぁ。私はマキ。よろしく。」
まだ、十二歳か十三歳に見えるが、はつらつとした女の子は自己紹介した。
「俺はタケル。」
と自己紹介すると、女の子は
「タケちゃん二人目かぁ。じゃぁタケルちゃんで!」
と言ってケラケラ笑った。
「タケちゃん?」
と疑問形でユールに向かって首をかしげたら、
「えぇ。彼が・・・あっ、兄が『俺の事はタケちゃんって呼べ!』と言って自己紹介したらしいんです。」
と言った。
そうか、もう一人のユールは結構ひょうきんな性格をしているんだなと勝手に納得した。
ユールはマキちゃんに
「私は鶏肉を、調理方法はシェフにおまかせで。」
と注文した。俺もよく判らなかったので「同じもので」と頼んだ。
残りの三人は、「いつもの」を頼んでいた。
「結局献立表なんて要らないのよねぇ」
と言いながらマキちゃんは厨房に戻っていった。

マキちゃんと入れ違いに厨房の対面卓の向こうにがっしりしたオヤジが現れて、
「悠太、今日はやっていくのか?」
と聞いてきて、お兄さんは、
「いや、今日は俺病み上がりなんだ。」

と返して、オヤジさんに「お前が病むはず無いだろう。」がははと笑われた。
気さくな良い店だと思った。

俺は、何となくお兄さんに質問してみた。
「お兄さんは楽師をやってるの?」
お兄さんは、自分の事だと理解すると、
「うん、旅の楽師をやってる。演奏が主だけど楽器を教えたりもするよ。あっ、敬語使った方が良いかな?年上みたいだし・・・」
「いや、全然気にしないよ。何で楽師になろうと思ったの?」
「母が旅の踊り手で、父と結婚して自分たちも父と生活する上で迷惑になら無い様に旅をする職業に就こうと思ったのさ。」
と言うと、ユールが突然立ち上がり、
「悠太さん。その話はやめましょう。お願いです。」
と慌てたように話しを遮った。何かまずい内容があったのかといぶかしんでみたが、
「お母さんの職業を継いだ形だったんだよね。おかしく無いじゃ無い?」
とユールに探るように聞いてみた。ユールは、
「そっ、そうですね。何もおかしくないですね。」
と言って座った。
お兄さんは、しばらく黙ったまま、あごに手を当てて、考え事をしているようだった。

やがて、食事が運ばれてきた。俺とユールは同じものを頼んだつもりだったのに、ユールには鳥の照り焼きが運ばれてきて、俺には鳥の半身を煮込んだ料理が運ばれてきた。俺は思わず、
「同じものじゃ無いの?」
と聞いてしまったが、マキちゃんは、
「だって、料理長のおまかせなんだから、同じとは限らないでしょ?」
と、悪戯っぽく片目をぱちりとつむって戻って行ってしまった。
「まあ良いか。」
と食べ始めてみたら、酸味のある露が絡んで柔らかく煮込まれた鶏肉は食べた事の無い美味しさだった。
「この鳥は鶏だな。この大きさだと結構若い鶏だね。甘酸っぱくて美味しい。」
と言うと、涼音ちゃんが、
「でしょう。この料理には、ヨーロッパが原産の果物が使われているんですよ。」
と教えてくれた。

食事をしながら雑談をしていたが、しばらく静かだったお兄さんが、突然
「タケルさんって職業は?」
と聞いてきた。ユールは、ため息をつくように「悠太・・・」と呟いたが、俺はよく判らなかったが、
「早瀬川で鍛冶屋をやっています。」
と元気に答えた。
「融資の目的は?聴いていいかな?」
とお兄さんは続けざまに聞いてきた。
「水車を作ろうと思って、川の流れを利用した動力で、槌を動かしたり、ふいごを動かしたり、鍛冶屋の助けになると思って。」
お兄さんは、
「水車?」
とユールに質問した。
ユールは食事を中断して長い時間をかけて身振り手振りを交えて水車についてお兄さんに説明した。しかし、その顔はいつもの表情よりも何か心配事があるときの顔に近かった。
説明が終わるとお兄さんは、「成る程、判ったよ。」と言って、ユールに向かって頷いた。
「俺たちは、本当は今頃早瀬川にいる予定だったんだ。色々あって今ここにいるけど、直ぐに向かうつもりだよ。もしかしたら一緒に行けるかも知れないね。」
とお兄さんは俺に説明してくれた。ユールは、何か言いたそうだったが黙っていた。
「その来るはずの人が来なかった事と、王都は出たという情報、そして最近盗賊団が出ると言う情報から最悪の事態を想定していたのですが結局、あの大立ち回りになってしまったという事です。」
と解説したのは、ルナだった。

その後は、お兄さんも雑談に参加した。
雑談の中で、俺が温泉で倒れたときの話になった。ルナが
「ユールが彼をお姫様だっこで運んだんですよ。」
といって笑った。おれは、
「今度は俺がお姫様だっこをするんだぁ。」
と大げさにおどけて見せた。するとお兄さんが
「無理無理、父さ・・・ユリさんは見かけよりずっと重いんだぜ。」
とおどけている。俺は思わず、
「ほんと?」
と聞き返した。ユールは恥ずかしそうに
「はい、だいたい八十キロくらいは有ります。」
と小声で恥ずかしそうに答えた。見かけの倍近い体重だ。
「例の機械のせいです・・・」
と付け加えた。
そうだったんだ・・・。
そんな旅の話題がしばらく続き、長めの昼食は終わりを告げた。ユールはどことなく安心したようだった。よく判らないが、良かった良かった。

その後、俺たちは別々に行動する事になった。
お兄さんと音羽ちゃんと涼音ちゃんはお母さんのところに一度戻って、もう一度旅立ちの準備をするらしい。お母さんは、子供を産んだばかりで動けないらしい。

俺とユールとルナは都の大通りに有るお店を覗きながら散歩をした。そして、ユールは、昔話を始めた。
「王都の最初の住人は王城のあるあの場所と、昔新宿御苑と言われる大きな公園があった場所に建てられていた停滞型シェルターから出てきた千人弱の人々と宇宙植民地惑星からの移民約二千人が停滞型シェルターの周りに作った町が始まりなのです。今でも、宇宙植民地惑星には約二万人の日本人がいますが、生活の激変を恐れて降りてきません。」
「停滞型シェルターって学校の歴史で教わったけど、時間の進行が遅くなる仕掛けを持った大きな球形の建物だったって・・・本当なの?」
「はい、時空間を殆ど切断してしまって、時間の流れを調整する事で建物の中で五十年を過ごすと、外の時間は五百年以上も経ってしまうと言う技術です。日本のものは七百年で設計され、両方とも一年と狂わず扉が開きました。正確さという意味では恐ろしい技術力ですね。中の時間で扉が開くので時間の経ち方が僅かでも違うと外の時間では大きな差になってしまうんです。一度動き出してしまうと外から扉を開く事は出来ません。世界中では地球の再生中に開いてしまって再調整に私達が手を貸す羽目になった国やいまだにいつ開くか分からないものも世界中に数多くあります。酷いものは・・・中で発生した病気で死に絶えてしまっているものまでありました・・・私もその開封に立ち会いました・・・中で生活出来る最長の時間は原子炉の性質上約百年が最長でした。百年有ればどんな事でも起きうる。出てきたら、全員精神的に病んでいた事もあります。どんなに大きくても、数百人しかは入れないのですから、村よりも狭いところに数百人が閉じ込められて・・・生活空間の設計が甘いと食べ物も資源も禁欲生活を強いられる結果になりますから・・・。でも、日本は良い例の一つでした。少なくとも、皆元気で再生した地球の地を踏めたのですから。」
「日本って凄い国だったんだ。」
「技術的には凄い国でした。停滞型シェルターの基本設計を各国に提供したのは学院の前身となった団体です。その発祥の地も日本でした。当時の日本は優れた社会主義国家でもあったので、学院の思想もさしたる弊害も無く受け入れられました。日本は、問題をあらかじめ発見して対応する解決策を講じる能力には乏しかったのですが、与えられた状況で臨機応変に切り抜ける能力と良いモノを見つけるとそれを進化・発展させる能力には定評がありました。」
「その能力が役に立ったの?」
「上手に娯楽を見つけて上手く発展させたので精神的に抑圧されなかったのだと考えています。」
「成る程。」
「そして、シェルターの扉が開いた三百年前、学院も協力して計画的に町作りを行いました。しかし、最初の数十年は人口は減少の一途だったのです。怪我、病気、慣れない環境に人口が安定して増えるようになるまでさらに五十年近い時間が必要でした。」
「その間、どんどん技術が失われたんだね。」
「その通りです。元々、手に入る資源や環境に合わない技術ばかりだったので、失われると言うより、最初から殆ど役に立たなかったのです。色々夢を見ていた技術者は失望していく事になります。想像していたよりも現実は厳しかったのです。運用開始から百年以上を経過したシェルターの資源はみるみる内に枯渇し役に立たなくなりました。」
「・・・」
「でも、貴方は水車を復活させてくれると言っています。水車は先文明の初期から活用され末期まで使われ続けた優れた技術です。・・・私は嬉しいんです。・・・嬉しいはずなのです・・・」
「泣いているの?」
「お願いがあります。タケルさん。今夜、貴方の答えを聞かせて下さい。」
「えっ、今夜?」
「はい。実は、少し事情が変わったのです。日本の王城に詰めていたルナイレブンが悪い知らせを持って来たのです。私は明日の審査が終わったらヨーロッパに行かなくてはいけません。戻ってくるべきか、今夜教えて頂きたいんです。」
「・・・俺は・・・」
「宿の名前の覚え書きをお渡しします。道が判らなくなったらこの紙を近くのお店の人に見せれば道を教えてくれると思います。」
「え・・・えぇとぉ・・・」
「夕方まで別行動しましょう。金貨を一枚差し上げます。無駄遣いはしないで下さいね。」
「あっ」
行ってしまった。ルナもいない。一人で答えを出せという意味か・・・。

俺は、正直、途方に暮れていた。
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2013/03/30(土) 21:40:58|
  2. 再生した地球にて
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