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くわぽんのつれづれ日記

思うが侭、つれづれに書いています。ほぼ、毎日更新中!!

再生した地球にて 第七章 (3/3)

気が付いたとき、俺は、温泉に持って行った着替えを着せられて焚き火の横に横たわっていた。
「本当にどうしょうも無いヘタレですねアナタは。」
ルナの痛烈な言葉が突き刺さった。
「気が付きましたか!!よかったぁ。」
ユールはとことん優しかった。

どうやら、ユールの胸を触っていると認識した俺は温泉で良い具合に逆上せていたのも相まって鼻血を出して気絶してしまったらしい。
その後、ルナが俺の手当てをし、服を着せて、ユールがお姫様だっこで焚き火のところまで運んでくれたんだという。
「俺の・・・男としての尊厳って・・・」
「有りませんね、そんなもの、ヘタレですから。」
ルナはきつかった。でも、ユールは優しかった。俺はもう元気だったが、水を持ってきてくれたりおでこに乗っていた手ぬぐいを濡らして顔を拭いてくれたり、とても献身的だった。

夜も遅くなったので、そのまま寝る事になった。ユールはまた俺の隣に来て毛布にくるまった。俺は何となく嬉しくてニコニコしてしまった。
ルナは相変わらず、不寝番を買って出た。火を焚いているだけで野生の動物はまず近付いては来ないらしい。怖いのは人間だと言っていた。
俺は、星の下で、お風呂作りに挑戦してみる事とか色々どうでも良い事をユールに話しながら、気が付いたら寝ていた。

朝起きると。ユールはまだ毛布にくるまっていて、ルナが朝ご飯を作っていた。
「おはよう」
と俺が挨拶すると、ユールの毛布がピクッと反応したような気がしたが、挨拶はルナからしか帰ってこなかった。
「おはようございます。今日の朝ご飯は、昨日の晩と一緒で良いですか?卵を落とすので少しは変わりますが。」
「うん、昨日の晩ご飯も美味しかったもんね。」
「ユールは毎食違うご飯を食べたがるんですが・・・正直私はまだその辺は判りません。美味しければ毎日一緒でも良いと思ってしまうので・・・」
ルナからそんな話が聞けるなんて初めてだ。あまり自分について喋らないから。でも、今回のは昨日と同じものを出す言い訳かな?
「毎日一緒はさすがに飽きると思うけど、二~三日なら同じでも大丈夫かな?」
俺は、気にせずに返事する事にした。すると、ルナは
「ユールの手を握ってあげて下さい。ユールはこういう日はなかなか目を開けてくれないんです。」
と言った。突然話が変わったのと、意味不明な内容に混乱していると、
「ユールはもうだいぶ前から起きているのですが、毛布から出てこようとしません。手を握ってあげて下さい。普段は私がしてあげているのですが、アナタの方が効果があると思います。」
「・・・手を・・・握ってあげれば良いの?」
「それだけで多分大丈夫です。」
ルナの顔に感情は感じ取れなかったが、言う事に従ってみた。
ユールは頭から毛布をかぶっていた。両手は胸元でしっかり毛布を握りしめていて、何か怖いものから隠れているかのように微かに震えていた。
俺は、毛布の中に手を入れて、どうにか右手を見つけると両手でしっかり握りしめ、
「大丈夫、怖くないよ。」
と話し掛けていた。
「大丈夫。大丈夫だよ。」
と言うと、ユールはゆっくりと顔を毛布から出して両目を閉じたまま俺が握っている右手を自分の頬に持って行き俺の手の甲で自分の頬を撫でるようにした。でも、まだ怖いと言うように俺の手を力強く握っている。
俺は、顔を近づけて、もう一度
「大丈夫だよ、怖くないよ。」
と言った。
突然、ユールは俺の首にしがみついてきた。そして、
「恐いの。雲一つ無い空が、私を吸い込もうとするの。」
と、まるで幼い少女の様な震えた声で訴えてきた。俺は、ユールを両腕でしっかり抱きしめながら
「俺が抱きしめてるんだ、吸い込まれたりさせるもんか」
と言った。
ユールは力一杯しがみつきながら不規則な息をしていたが、もう一度、「大丈夫、俺が居る。」と言うと、ゆっくりとした呼吸に戻り、身体を離した。まだ目を閉じたままだったので、抱きしめなきゃと思った俺は、腰に手を回し、しっかり抱きしめた。
ユールの瞼には涙が光ってた。その瞼が俺の目の前で僅かに震えた後、ゆっくり開いた。
「おはよう。」
俺は、多分、自分が出来る最高に優しい笑顔で挨拶した。
ユールは、先ほどまでの真っ青な顔とは打って変わって少し赤みの差した顔で恥ずかしそうに
「おはようございます。」
と挨拶した。

ユールは死ぬのも恐くは無いけど、朝起きたときの空が雲一つ無い空だと恐くて起きられなくなってしまうんだと恥ずかしそうに教えてくれた。
確かに、昨日の夜も星が綺麗だった。でも、今朝は山の天気とは思えないくらいの抜ける様な青空だった。まさに雲一つ無い秋晴れだ。
ユールは宇宙で生活していた事もあるらしい。そこは空気も重力も無く、飛んで言ってしまうと何かにぶつかるまで飛び続け、助けが無ければ自力ではまず生き続けられない死の空間だそうだ。ユールはそんな宇宙空間も恐くは無かったという。しかし、地球に降りてきて地球の重力を感じた後、空を見上げたときに雲一つ無い空に自分が吸い込まれる様な感覚に陥り大変な恐怖を感じたと言う。それ以来、雲一つ無い空はどうしようも無く恐いらしい。それでも、起きているときなら自律心も自制心も働くが、朝起きた直後に目に飛び込んでくると、もうどうしようもないのだと言った。
「俺も、空を見上げるのが恐かった時期があるなぁ。」
俺たちはまだ抱き合っていた。
「そうなのですか?」
「ああ、丁度、あの飛行機で降りた草原でね、寝っ転がって空を見上げたら、心が身体から離れて空に吸い込まれるんじゃ無いかと思って、慌てて生えている草にしがみついちゃったよ。あの頃はまだ子供だったなぁ。」
「タケルもこの感覚を経験した事があるんですか?」
その時、ルナが呟いた。
「まさに『不来方の お城の草に寝転びて 空に吸われし 十五の心』ですね。思春期には良くある心象の様ですよ。今の歌は先文明後期の石川啄木という方の詩です。」
ユールは慌てたようにルナに這い寄り、
「それで、みんなはどうやってその恐怖を克服するのですか?」
と、懇願するように問いかけた。
ルナは、とても残念そうに、
「大人になるにつれて、その感覚は失われていくようです。」
と応えた。
ユールは、無人島に取り残され、助けの船に見つけてもらえなかった少女のように項垂れた。
俺は、二人の会話の意味するところを理解するのにかなりの時間を必要とした。
時間が解決してくれるなら良いじゃ無いか、と単純に思ってしまったのだ。しかし、現実は違ったのだ。正確には分からないが、ユールは少なくとも三百年前にはここに居たのだ。三百年経っても変わらない状況を時間が解決するとは思えない。つまり、ユールにそこまでの恐怖を与える心象は消える事が無い。それを受け入れて他の方法でその恐怖を乗り越えなければならない。そう、宣告されたのだ。しかも、普通の人はそれが恐怖であったとしても一時的なもののだ。俺は、かける言葉さえ思いつかなかった。先ほどまでのユールのぬくもりが、尚更、俺の胸を締め付けた。

やがてユールは、小さいけどしっかりした声で
「とりあえず、諦めて前へ進みましょう。」
と言った。そして、首を二、三回左右に振った後すっくと立ち上がった。
「ありがとうございます、タケル。もう大丈夫です。心配かけました。」
と、見返る格好でお礼を言った後、ルナの作りかけのひっつみを手際よく完成させた。
ユールがただの少女では無い、その奥底にある強さを垣間見た気がした。

「今日は、昨晩と同じ料理ですが、フワフワの溶き卵入りです。」
「私が考えたんですけどね。」
ユールとルナの掛け合いはちょっと面白かった。
卵の入ったひっつみは晩ご飯の時とはまた違った味わいがあって美味しかった。
今朝は洗い物が少なかったので樽の水で洗い物をした。朝の身支度も樽の水で済ませた。ついでにと、ルナは樽の水を全部捨てて川まで汲みに行って来るとつげて樽を背負子で背負って降りて行ってしまった。

二人きりになったところで、ユールが今日の目的地について話し出した。
「今日の目的地は港町です。そこには今でも漁村があります。でも、町は丘の上にあって、漁村とは行っても漁師小屋が何軒か有るだけで誰も住んでいません。この辺りは外海なので津波が来る事があるんです。」
「津波?」
「ええ、津波と行って、海が盛り上がって村を襲った事があるんです。この三百年で二回ほどでしょうか?」
「そうなんだ。津波を除けて丘の上の町で生活しているんだ。」
「はい、元々、早瀬川の町ももっと海側にあったのですが、津波を経験して山側の平地に移動したんですよ。その御陰で海から結構離れてしまいましたが・・・」
「うん、海まで歩いて二時間はかかるね。夏の暑い日は海水浴に行ったりするけど。」
「ええ、港町は海までそんなには離れていません。そのため、海で漁をする人たちが今でも結構居るんです。丘の上には田んぼも少しはあって食べ物は豊富です。新鮮な海の幸が食べられる数少ない町です。」
「へぇ、でも、新鮮って言っても、煮たり焼いたりするならそんなに新鮮かどうかって関係ないんじゃ無い?」
「海の魚は生で食べられるんです。寄生虫などをあまり気にする必要が無いんで。」
「生?生の魚?うへぇ」
さすがに、生の魚は想像出来なかった。食べた事無い。
早瀬川の町では魚は主により近い湖や川の魚で生で食べると危ないと言われているので皆火を通すのだ。
「お刺身や白子の躍り食いと行って生きたままの小さな魚を丸呑みにする人も居ます。」
「だめだ、想像も出来ない。」
何となく辟易としてしまった。あれ、さっきから港町って言ってるけど、
「そう言えば、港町って言う名前の町なの?」
「はい。そう呼ばれています。今、ちゃんとした港があるのは王都と港町だけです。まだ、木で大きな船を作れる職人が居ませんからね。」
「へぇ、じゃぁ何の為に港があるの?」
「今は、漁港として小さな船が使っています。魚を捕りに行く船の為の港ですね。」
「成る程。」
子供の頃から港町のことは聞いていたけど、本当に港町という名前だったのにはびっくりした。生の魚というのにもちょっと興味はあるが、怖さ半分だ。
文明が衰退していく中で失われた料理も結構あるんだろうな。醤油や味噌は日本の家庭ならだいたい誰でも作れるけど、三百年前は作れない家の方が多かったらしいし、生っぽい魚は冬に港町から仕入れてくる新巻鮭くらいだ。新巻鮭は殆ど焼いて食べるけど、生でも食べられない事は無い。ただし、塩の代わりと言っていいくらいしょっぱい。焼くにしても塩抜きをしてから焼くくらいだ。
生で食べられるものと言えば、牛肉だ。年に何回か牛をしめるのを手伝うと、生で食べられる新鮮な牛肉をもらえる。でも、半日したらもう焼かないと危ない。牛肉は滅多に食べられないまさにご馳走なのだ。
鶏肉は生だと危ない。卵も良く火を通して食べる。
こう考えると、俺の町で生で食べられるのは本当に牛肉くらいだな。

そうこうしていると、ルナが樽を担いで帰ってきた。カストゥルとポルックスを呼んで出発の準備が始まった。
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2013/03/02(土) 03:15:37|
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