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くわぽんのつれづれ日記

思うが侭、つれづれに書いています。ほぼ、毎日更新中!!

再生した地球にて 第七章 ユールとルナ (1/3)

第七章 ユールとルナ

「この二日ほど盗賊は顔を見せていないようです。」
と、唐突にルナが喋り始めた。
「タケルはローブを羽織っておいてください。寒くなりますよ。」
ルナの畳み掛ける様な発言に俺は圧倒されるようにローブを羽織に馬車の中に移動した。
「ユール、何故情報遮断しているんですか?」
ルナは何の話をしているんだ?ルナはまだ一方的に話している。
「アナタの指示があればもう少し詳細な情報もとれるのですが、どうしますか?今は、王都の門番が持っているほどの情報も収集出来ません。」
ルナの問い合わせに、ユールは、
「・・・これは私の我が儘なので、国王の手の物を動かすわけには行きません。情報遮断は・・・これも私の我が儘です。タケルと一緒にいる間は・・・我が儘に付き合ってください。」
「判らなくも無いですね。普通の人でいたいと言うことですか。いざとなったら許容出来ませんよ。」
「判っています。・・・判っています。」
二人の会話に入ってはいけないが、俺がきいてもいい話なのか?
「戻った。」
俺は、ローブを羽織ると、元気よく声を出しながら元の御者席に戻った。
「俺がきいてもいい話?」
ルナの返事は素っ気ない物だった。
「私には判りません。ユールに聴いてください。」
今までの二人には無かった反応だった。
「どうしたの?」
俺は、ルナの苛立った発言に落ち着いて欲しいという意味も込めて優しく話し掛けた。すると、返事をしたのはユールだった。
「私とルナは、普段は声を使わなくても会話が出来るんです。」
「凄いね。」
俺は驚嘆して見せたが、ルナはその事も気に入らないというように
「凄いわけではありません。先文明の技術です。当時としては一般的な物です。」
と冷たく言い放った。さらに畳み掛けるように事情を説明してくれた。
「でも、ユールは私とのコネクションを切断したんです。・・・私との会話の維持を拒否したんです。」
「どうして?」
ルナの向こうで俯いているユールに向かってきいてみた。
「ルナは・・・常に月のルナの本体と繋がっています。ルナの本体はムーンの持つ膨大な情報と繋がっていて・・・ムーンはこの世界で起きているほとんど事柄を監視していてルナと・・・その情報を共有しています。知りたく無い事も・・・知る事が出来てしまうのです。特に、今ルナは二つの情報を調査しています。一つはタケルの事、もう一つは・・・王都の近くに出没している盗賊の事です。」
ルナは、苛立たしげに、
「ユールの為だと思って調べているんですけどね。それが気に入らないようです。」
と言うと、ユールは即座に「違います。」と否定した。ユールはしばらくの沈黙の後、
「ルナには本当に感謝しているんです。でも・・・正直に言うと知るのが怖いんです。今、ルナが調べてくれている事を知ってしまうのが怖いんです。・・・こんなに怖いと思うのは・・・初めてなんです。」
と呟くように囁いた。実際、俺には話の半分も判らなかったが、何と無しに呟いていた。
「俺の事は、ルナから知って欲しくないな。俺自身から知って欲しい。俺、自分の事では嘘つかないよ、約束する。隠し事も出来るだけしないから、俺から聴いてくれ。」
ユールは驚いたように俺を見て居たが、突然優しい顔になって、
「では質問です。私の事は好きですか?」
と意地悪に聴いてきた。
「もっ勿論、大好きだよ。」
「なら、何故抱いて下さらないのでしょう。」
「だって、結婚してないし・・・」
突然、悲しそうな顔になり、
「結婚は・・・絶対に必要ですか?私と・・・より親しくなる為に・・・」
と言いながら、視線はだんだんと下に落ちて行ってしまった。
「結婚は、やっぱり必要だと思うんだ。子供が出来る行為をしようとするんだから・・・違うかな?」
俺の方を睨むように見ながら、叫びにも近い声で
「私が、結婚しなくても良いと行っても、結婚しないと私を・・・」
とそこまで言うと、また、視線を下げて、つながりが無いような事を言い始めた。
「私には、子供の・・・少女の頃が無いんです。」
「えっ」突然何を言い始めたんだろう。
「私は、生まれたときから、この姿なんです。」
「・・・」
「私には、多分、タケルが周りの人々から与えられてきた道徳観や周りの人たちの結婚式などから得てきた結婚への憧れや結婚という行為の持つ意味付けと言ったものを全く経験していません。」
「・・・?」
「だから、正直に言うと、結婚したいと言ってくれたあなたの気持ちを・・・理解出来ないんです。」
「・・・な・・・に・・・?」
「ただ、結婚した人は同じ家に住み、共に生活するのがこの国の風習だという事は理解しています。」
「え?風習?」
「でも・・・私は・・・アナタの家でずっと生活する事は出来ません。」
「風習・・・って?」
「え?」
ユールは突然のように俺の声に反応した。
「私の言っている事おかしいしいですか?意味、通じませんか?」
「言っている意味はわかる。でも、風習って言われると・・・なんか違う気がする。」
「あぁ、そうですね。実は、結婚後の生活については、国によって若干差があるんです。なので、私の感覚では、風習なんです。たとえば、国によっては、別々に住んで、用があるときは男性が女性の家に通うという風習の国もあるんです。」
「そういうことか、だから風習っていう言い方になるんだ。」
「怒っていますか?」
「いや、感覚が違うんだって言う事は何となく判った。そうだね、俺には結婚に対する憧れや義務感みたいなものがあるのかも。子供を産んでもらう人とは結婚しなきゃいけない。みたいな・・・」
「多分、そうなのです。でも、私にはそれが無いのです。だから、出来れば、私に歩み寄って欲しいと・・・そう思っているのです。」

二人の会話にルナが突然割り込んできた。
「ここから山道に入ります。道が悪くなるので、二人だけで会話するなら馬車の中に移動して頂けると嬉しいです。私を挟むと声が聞き辛くなりますよ。」
俺は、ルナに感謝した。
「そうだな、馬車に入ろうよユール。ありがとう、ルナ。」
と言って馬車の中に移動した。
「いいえ、何てことありません。揺れますから気をつけて下さいね。」
ルナはもう怒っていないようだ。ユールもルナに、「お願いします。」と言って、馬車の中に来た。

俺は、ユールと良く話さなきゃいけないと思った。二人の間には感覚の違いとしてはもしかしたら絶望的なものがあるのかも知れない。
ユールが幌の中に入って来たとき、馬車が大きく揺れた。どうやら上り坂に入った様だったが、ユールは対応出来ずに俺目掛けて倒れ込んだ。
「いたたっ」と言いながら顔を上げ、俺を見上げるようにしながら「ごめんなさい。大丈夫でしたか。」とこちらを伺った。その後、起き上がりながら、
「ルナ、態とやりましたね。」
と怒って御者席に向かって怒鳴った。
「何のことでしょう。ニヤリ」
わざわざ声に出してニヤリってどう考えても意図的ですよねぇルナ。

二人で何とか起き上がり、幌を背にして向かい合うように備え付けの物入れを椅子にして毛布を座布団代わりに向かい合って座った。
四輪の馬車だけ有って結構大きいのだけど、何せ荷物が少ない。三人の一週間分の食料と調理道具が一箱ずつ、水の樽が一つ、果物の入った箱が一つと、両脇の備え付けの二メートルちょっとの長い箱が二つ。それ以外は床がそのまま見えている。箱の間の場所だけでどうにか二人が並んで眠る事が出来る。箱の一番後ろは最初に座った後ろ向きの椅子になっている。馬車の両脇は箱より高い壁になっていて、摑まれる隙間が所々に空いている。その壁の上から棒が伸びて幌を支えている。
日本は再生直後、大量の物資の輸送は船で行っていた。
しかし、技術の衰退で大きな船が維持出来なくなり、幌馬車で隊商が組まれるようになった。今も町は数えるほどしか無いので、多くの隊商は王都から工業製品を持って来て、町から穀物や綿、絹などを持って帰るという行ったり来たりの商売で成り立っている。
だから、幌馬車は今では結構一般的な乗り物なのだが、折角なのだから色々積んでいけば良いのにとか貧乏根性を出してしまいたくなる。

ユールはしばらく黙って俺を見ていた。そして、
「さっきの続きを話しますか?私は別の話でも良いと思って居るのですが。」
と少しはぐらかしたいような雰囲気を醸し出して居たが、俺はあえて話を切り出してみた。
「ユール、ユールは俺に歩み寄って欲しいと言っているけど、ユールは歩み寄れないの?」
「結婚したいという意味ですよね。・・・たとえば、五年後に離婚してくれるという約束をいただけるなら、結婚しても良いです。」
「ん~~。それって、俺の考える結婚と違うんだよね。」
「知っています。と言うべきでは無いかも知れません。『そうであろう』と思っています。だから、結婚出来ません。」
「そこは歩み寄れないところなんだ。」
「歩み寄ると・・・とても面倒な事になります。だから・・・私の為とか、アナタの為とか、どちらかの我が儘とかそういうことでは無く、歩み寄るのは・・・無理なんです。・・・『もう、あんな思いはしたくないし、させたくない』って言ったら判って頂けますか?」
「・・・ごめん、具体的に話してくれないと判らない。」
「・・・具体的な話にすると・・・あなたの人生を変えてしまう恐れがあります。人は、愛だけでは生きていけません。アナタは、タケルはまだ理解していないような気がするんです。だから、具体的には話せません。」
「俺が子供だと?」
「許して頂けるなら・・・そうです。・・・私は・・・間違いなくそう言っています。」
それまで俺の目を見てくれていた瞳は今は真下を見ているようだった。肩は小さく震えている。馬車が揺れているからでは無い事は明らかだった。
「怒ってないよ、大丈夫だよ。」
俺は、出来るだけ優しく声をかけた。
「私、自分でもかなり酷い事を言っている事は判っているんです。でも、私にも譲れない事はあるんです。」
声も震えていた。
「そうだな、ユールは最初仲良くもならないって言ってたんだから十分歩み寄ってくれたんだな。今度は俺が歩み寄る番か・・・。うぅぅぅぅ。」
「無理しないで下さい。自分の価値観を、子供の頃から作り上げてきた価値観を変えるという事は心に非常に大きな痛みを伴うんです。・・・悩むなら、すぐには約束をしない方が良いと思います。タケルの良いところが壊れてしまっては本末転倒ですから。」
ユールは慌てたように歩み寄り、俺の肩を抱き寄せ俺の頭を適度にふくよかな胸に納めた。俺は、ユールの胸から母親のような女性の香りを嗅いでいた。
「ゆっくり考えなければいけない様なら、無理はしないで下さい。まだ、慌てるときではありません。」
俺は、やっぱり悩んでいた。ユールは悩むなら先送りしろと言っているが、ユールは許してくれるが、これは間違いなくユールに失礼なんだろうなぁ。本当に先送りして良いのかなぁ。

俺たちは、二人で色々話し合った。でも、重要なところでユールは口を閉ざす。俺が何故ユールが結婚を拒むのか知りたがっている事が伝わってしまうので、ユールは警戒してなかなか核心に近づかせてくれない感じだ。

でも、時間は経つわけで、馬車に揺られながらお昼の時間になった。
「ここまで順調なので、食事時間は馬車を止めます。」
ルナが振り向いて話し掛けてきた。ユールはにこやかに
「ルナに任せます。」
と返すと、ルナは、少し誇らしげに、
「目的地の到着予定は十六時頃ですが、今日は十六夜で晴れる見込みなので温泉には夜でも入れると思います。」
「久しぶりですね。あまり荒れていないと良いのですが。」
「温泉って何?」
俺は結構間抜けな質問をしていると思う。たぶん。
「温かい湯が沸き出している泉なんです。」
「あぁ、知ってる。山の方にある奴だ。早瀬川の近くにもあるらしいけど、熊が出るって言うんで行った事は無いんだよなぁ。」
「今日行くところも熊は出ますよ。」
「・・・危ないんじゃ・・・?」
「大丈夫です。熊避けはします。」
「熊除けって?」
「鈴を鳴らすんです。熊は臆病なので、人間の出す人工的な音には近付いてきません。熊が近付けば今でもルナが鈴を鳴らすはずですよ。」
「へぇ。」
丁度その時、馬車が大きく揺れた。そして、止まった。
「馬車を寄せました。お昼にしましょう。」
ルナが唐突に言った。

カストゥルとポルックスを馬車から外すと、近くの草の上に布を敷いてみんなで座った。
ユールは朝焼いていたパンと牛の干し肉と牛乳の脂肪に塩を入れて発酵させたものを出してきた。
「パンにこの発酵バターを塗って食べて下さい。この干し肉は味が付いているので、そのまま食べて下さい。」
「バターって言うんだ。この油。堅いね。・・・おっ癖があるけど美味しい!!」
「私のお気に入りです。これも私の手作りなんですよ。」
「へぇ、どうやって作るの?」
「絞りたての牛乳をとにかく振るんです。頑張って振ると脂肪が固まるので、それを取り出して塩を混ぜ込んで発酵させるのですが、一度うまく発酵した入れ物を使うと次もうまくいくんです。」
「なんか、簡単なのか難しいのかよくわからないね。」
「実は簡単なのです。」
ユールはこういう話をしているときが嬉しそうだよねぇ。料理が好きなんだなぁ、きっと。
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2013/02/24(日) 17:08:53|
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