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くわぽんのつれづれ日記

思うが侭、つれづれに書いています。ほぼ、毎日更新中!!

再生した地球にて 第五章 旅立ち

第五章 旅立ち

今朝の目覚めは快調だった。天気も我々を祝福しているように晴れ渡り、爽快な秋風が吹き渡っていた。
「今日旅立ちで本当によかった。雨とかだったら行くの嫌になっていたよなぁ。」
と独り言を言いながら玄関先で身体を動かしていると、それを聞いていたお袋が声をかけてきた。
「何を今更言ってるの。旅の途中だって天気は変わるのよ。昨日は夕日が綺麗だったから今日あたりから天気は下り坂ね。秋雨が来るかも知れないわ。」
「嫌な事言わないでくれよ。そんなに行って欲しくないのかよ?」
と俺が返すと、お袋は口をとがらせて
「別に今更止めないわよ。」
と言い、真顔になって、
「心配はするけどね。でも、行きはユールが居るから大丈夫ね。三百年前は近衛兵の筆頭が敵わなかった相手だもん。」
と言った。俺は驚いた。
「うへぇ、マジかよ。知らなかった。」
「本人が『自分は強い』って言ってたじゃ無い。自分の思い人の台詞も信じられないの?それとも聞いてなかった?」
「聞いてたけど、そこまでとは・・・」
「まぁ、今日は学院の売店までは見送るわよ、用事もあるし。」
「どうもありがとうございます。」
二人で声を出して笑っていると、親父も起きてきた。
「あれ?もう出ちゃうのか?」
寝ぼけたようなセルフをはく親父に、お袋は親父の背中を思いっきり叩きながら
「まだよ、朝ご飯の準備ができているから二人とも済ましちゃいなさい。」
と言った。親父と俺はそろって
「は~い」
と返事した。何だかんだでお袋は我が家最強だ。
朝ご飯を食べ終わって学院の施設に向かう間、お袋が何気なく、そして呟くように俺に話し掛けてきた。
「私も正直、ユールさんが何を考えているのか深いことは判らないんだけどね。一つだけ判ることがあるのよ。同じ女としてといってもいいかもしれないけど。彼女は人が好きなのね。それだけに結構惚れっぽいところがあるんじゃ無いかと思うの。」
「惚れっぽいって?」
「人を簡単に好きになっちゃうって事。勿論、男女の仲としてね。誰でもいいというわけじゃ無いからね!!」
「俺断られてばっかりだけど・・・」
「結婚はね・・・でも、交際は受け入れてくれているんでしょ。」
「そう思う。」
「お前が何を考えてユールさんの申し入れを断っているのか母さんには判らないけど」
「愛人になるって事?さすがにまずいでしょ、いろいろ・・・」
「私は構わないと思っているのよ。ユールさんも気にしない。でも、お前がユールさんを受け入れるにしても受け入れないにしても、ユールさんを裏切らないであげて欲しいの。彼女はお前に決して嘘はつかない。これは女としての私の勘。だから彼女を信じてあげて、そして裏切らないで。母さんからのお願い。」
「何が裏切ることになるのか・・・よくわからない。」
「その辺は自分で考えなさい。でも、彼女を裏切る事って言うのは、彼女がとても悲しむこと。ユールさんは、お前との別れがどんなに悲しくても、お前が自分の気持ちにしっかり向き合って決めたことなら裏切られたとは思わない。ユールさんは覚悟は出来ているみたいだから、でなきゃ一緒に旅なんてしてくれないだろうしね。」
「俺、正直わかんないんだよね。」
「お前が自分を裏切らなければいいような気はするけどね。しっかり悩みなさい、少年!!」
「そんなに幼くないよ・・・俺・・・」
「まだ子供よぉ、女心が判らない内はどんなに年を取ってもお子様って言われるのよ、男はね!!」
といいながらお袋は「かっかっか」と笑った。

学院の施設に到着すると、ユールは、朝、市場で買ってきた食材を幌付きの四輪馬車に積み込んでいた。
見た事の無い作りの馬車だった。まず、車輪が見るからに木ではないものでできていた。触ってみると堅いが僅かに弾力がある。車輪から軸までは細い金属の棒が何本も走っていて、太い金属の軸につながっている。その軸も全く錆びていない。触ってみると鉄に近いが、光沢や表面の冷たさなどが鉄では無いと教えてくれた。
「鉄じゃ無いね。」
と独り言を言ったら、ユールが驚いたように返事してくれた。
「すごい、さすが鍛冶屋さんですね。その通り、ただの鉄ではありません。錆びにくいように混ぜ物をしているんです。でも、そのおかげで鉄に比べて少々弱い部分もあるんです。善し悪しですね。」
「どんな風に違うんだ?」
親父が興味津々に聞いてきた。ユールは嫌がる事無く教えてくれた。
「削れやすかったり、熱に弱かったりですね。なので、速く走るための馬車には鉄の方が適しています。鉄なら油を差せばある程度錆びも防げますし・・・。」
「どんな混ぜ物をしているんだ?」
と続けざまに質問する親父にユールは申し訳なさそうに返した。
「すみません、私がお教えする事はできない決まりなんです。学院に行けば教えてくれると思いますが・・・、そんな暇は無いですよね。ごめんなさい、でも、一つだけ手掛かりですが、ニッケルやクロムや銅など金属は混ぜると基本的に堅くなります。その代わり熱に弱くなる傾向にあるんですが、特定の配合で丁度良い物ができる事があるんです。」
親父はびっくりした。
「今、答えを言ったように聞こえたが・・・」
ユールは慌てて否定した。
「そっ、そんな、まさかぁ、私が自分で作った決まりを曲げるわけ無いじゃ無いですかぁ。」
うわぁ、わざとらしい。と俺は思ったが、ユールは悲しそうに続けた。
「でも、配合は・・・すみません、本当にお教えできません。これは、皆さんに見つけて頂く必要があります。」
親父は、じっとユールを見つめていたが、まもなく明るく言い放った。
「まぁ、教えて貰っても、家には鉄をどろどろに溶かして銅と混ぜる事ができるような道具は無いしな。必要ならこつこつやるさ。」
「ありがとうございます。お心遣い痛み入ります。」
ユールが笑顔で答えると、親父は、思いついたように
「そうか、学院の鉄と砂鉄を混ぜると性質が変わって包丁を作るのに適した鉄になるのと似ているなぁ、そういうことか、そうだなぁ、孫か曾孫に挑戦させてみるか。」
「自分ではやらないのかよ。」
と思わず突っ込んだ俺に親父は大笑いしながら、俺にはそんな元気はもう無いなどとほざいていたが、多分お金と余裕があれば自分がやりたいんだろうなと思いながら親父を見つめた。
馬車に関しては、そのほかにも車輪の軸が繋がっている板バネに棒状の何かがまるでバネに働いて貰っては困ると言わんばかりに繋がっていた。ユールに聞いてもこの仕組みに関しては、一切教えて貰えなかった。

そうこうしていると、学院の売店からいつも会計をしているお姉さんが出てきた。顔見知りだった俺は「おはようございます」と声を掛けた。お姉さんも元気に挨拶を返してきた。すると、ユールが意外な事を告げた。
「あぁ、丁度良かった、こちらが出納係のルチアさんです。」
えっ、この人が?
「こちらが先日お話しした鍛冶屋さんです。」
とユールは俺を紹介した。俺は、
「おはようございます、鍛冶屋の須塔武です。」
と言うやいなやユールが叫び声とともに耳を塞ぎ膝をついた。
「あーっ!!、あー、遅かった、知りたくなかった、貴方の名前。」
と、本当に残念そうに喚いた。実際、喚いたというのが相応しい叫びだった。
「へっ?知らなかったっけ?」
「知らなくてすむように微妙に避けて居たのに、今まで上手く誤魔化してこれたのに、ココで聞いてしまうとは・・・」
ユールは、がっくりとうなだれている。白いドレスが汚れるのも構わないと言わんばかりに地面に突っ伏している。
「ってゆうか、俺の名前を知りたくないってどういう意味だよ!!」
今更の突っ込みである。
「アナタの名前を知ってしまうと、きっとアナタは『俺の事はタケルって読んでくれ』とか言うに決まっています。私はアナタと少し距離を置いた関係でいたかったのです。」
「いや、名前を知らない関係ってかなり他人な関係だよねぇ。悲しいよねぇ。」
「でも、私は知ってしまいました。ココであえて聞いてみましょう。アナタはズバリなんと呼ばれたいと思っているのですか?」
「いやぁ~っ、それはやっぱり『タケル』って呼んで欲しいって・・・勢いで言ってしまったがかなり恥ずかしい会話だなぁこれ。」
ルナが珍しく大声で笑いながら
「二人とも若くて何よりですね。老獪はジト目で観察させて頂きます。」
とおなかを抱えている。冗談抜きで恥ずかしくなって二人とも真っ赤になって黙り込んでしまった。すると、聞いていた周りの関係ない人たちまで一緒になって笑ったり冷やかしたりし始めた。
ユールが馬車に逃げ込むと、さすがに周りの人たちは自分の仕事に戻って行ったが、親父とお袋は意味ありげに微笑み続けていた。

ルチアさんと紹介された学院の出納係は、俺に右手を差し出しながら、
「ユールはあまり人の名前を覚えないので誰だか解らなかったんですけど、武さんなら知り合いですから安心してお預かりできますね。良かった。」
と言ってほほえんでくれた。俺も、
「よろしくお願いします。俺も、いつものお姉さんだとは思わなくて、知っている人で安心しました。」
と照れながら握手を交わした。親父もお袋も、いつも鉄を仕入れるときの会計をしてくれている人だと知ると安心したようだった。そうか、ルチアさんって言う名前だったんだ。学院の人の名前って覚えにくい名前が多いんだよなぁ。

気がつくと、ユールは黙々と二頭の馬を馬車に繋いでいた。今までに見た中でもかなり逞しい部類に入る馬だ。
「良い馬だねぇ。」
「はい、カストゥルとポルックスです。賢い馬です。」
「へぇ、道中よろしくな。」
と言って首をぺちぺち叩いてやると、二頭はまるで言っている言葉の意味がわかって返事をしているように同時に嘶いた。

ルナが水の入った樽を馬車の後の中央に固定すると、ユールは、
「それでは、出発しましょう。雨が降る前に少しでも王都に近付いておきたいですからね。」
と言った。ルナが御者席、ユールは後方の樽の隣に座ると、俺には樽の反対側に座るように促した。俺は従わざるを得なかった。何せ、学院に行った以外は初めての旅である。緊張もしていた。そのとき、ユールはまるで俺の緊張を解すかのように、
「ご家族に手を振ってあげてください。」
と、自分も手を振り、行って来ますと挨拶をしながら微笑んだ。
ルナは
「では、先ず街道に出ましょう。カストゥル、ポルックスお願いします。」
と鞭を振るう事も無く話しかけると、二頭の馬は軽い嘶きと供に歩き始めた。本当に賢い馬だと感心しながら、俺もお袋と親父に手を振った。
「行って来ます。」
せめて元気に挨拶すると、お袋も親父も手を振り返しながら、頑張って来いと大きな声で送り出してくれた。
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2013/01/26(土) 21:38:29|
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