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くわぽんのつれづれ日記

思うが侭、つれづれに書いています。ほぼ、毎日更新中!!

再生した地球にて 第三章 日本までの飛行機の中

「当機の操縦はルナセブンが担当します。航空管制はルナスリー、安全監視はムーンファイブです。」
と搭乗員が説明を始めた。
「本日の客室担当は私アルテミスセブンワンが担当します。飛行予定時間は十時間、日本の到着予定時刻は午前七時です。何かありましたらお気軽にお声がけください。」
「ちなみに、私はルナツーです。」
とルナが言った。
ルナには現在十二人(?)の兄弟がいて、二番目が自分だと教えてくれた。一番年長の兄弟はルナワンで学院全体の管理をしているそうだ。アルテミスはルナの間接制御端末でやはり人間では無いといわれたが、全く意味もわからなかったし実感もできなかった。
「来るときもそうだったけど、時差って言うのがあるんだね。今はまだお昼前だもんね。」
と雑談代わりに切り出してみたら、ユールが小声で
「これは秘密なのですが、特別に教えてしまうと、学院へはどの町からも十時間の時間をかけて到着するというルールがあるんです。近くても遠くても・・・。時差は隠しようがありませんが、できるだけ場所を知られたくないんです。」
と言った。
「誰でも来られるのに場所は秘密なんだ。」
「軍隊が来て略奪するといったことがあると困るんです。価値のある物がたくさんありますし、教員とその家族約二千人が生活していますし、今日現在は軍隊も防衛設備もありませんし、実は研究機関として研究も続けているんです。今でも新しい発見が結構あるんですよ。今回はその発表会があったので久しぶりに学院に来たのですよ。」
「でも、教えるのは先文明の情報なの?」
「仕方が無いのです。というか・・・今の状態では先文明の情報のほとんどは活用できません。たとえばとても沢山の電気を使ってヒッグス粒子を操作して物体の重量配分を一時的に変化させることができます。といっても、何のことか、何に使えるか想像も付かないでしょう?」
「確かに何を言っているのか全く判らない。」
「三百年ほど前、危険を冒して農業と最低限の工作道具とその作り方、使い方、整備の仕方を伝えました。最初の頃、人々は地下シェルターに残っていた原子力発電所を使って電気を得ていたため、身の丈に合わない技術を使い続けていました。すでに面倒も見られず、燃料も供給できない、いつ爆発して自分たちを滅ぼすかもしれない。そんなものに長いこと依存していたので、食糧の確保もできなくなりつつあったのです。」
「・・・大変だったんだね。」
「私たちは、仕方なく、組織的に農業や工業を伝えるために国家という組織概念を利用しました。結果として初代国王などと欲しくもない称号を得てしまいました。」
「世界中を回ったのは・・・」
「安全に原子力発電所を解体するためです。・・・最初はすごく恨まれました。でも、農業や工業の伝承を条件に納得してもらいました。・・・その時代、文明の利器のほとんどが失われました。大変な選別を受けて、現在、わずかに残る太陽光発電設備で動く簡単な機械が今でも使われています。それですら、長期間の保全、修繕に耐えられる機械は先文明後期の技術水準からすると原始的なものばかりでした。文明が進むと機械は長持ちしなくなるんです。このままだともうしばらくすると時計も作れなくなってしまいます。螺子や歯車は先文明の機械に頼っているので・・・」
「記録媒体も結局石碑が一番確実に残せる方法だって教授も言ってた。」
「でも、別な問題として、原始的な工業には職人の養成が必須条件になります。どうしても時間がかかるし、沢山は育てられません。」
「俺って幸運なんだなぁ、親父に鍛冶の技術を教えてもらえたし・・・」
「お父様はまだお元気なんですか?」
「元気だよ。子供の頃から、兄弟の中で俺にだけ特別厳しく鍛冶の技術を教え込んだんだよなぁ親父。俺が学院に行くっていったとき、俺はほとんどの鍋や釜を直す仕事を引き受けてたんだけど、特別製の鍋なんかは触らせてもらえなかった。親父はそれくらいすごいんだ。」
「特別製の鍋?」
「ああ、鍋の厚みが場所によって違ったり、作り方の関係で火にかけ続けても保ちが全然違うんだ。なかなか穴が開かない。」
「なるほど。鍛造品ですね。」
「そうそう、よく知ってるねぇ。」
「私も・・・刀鍛冶の端くれなので・・・」
「そうなの?」
「そ、そういえば、最初に不足して苦労した工業製品って何だったと思います?」
「何だろう、工業製品って言うんだから・・・鍋とか?」
「実は、布と糸だったんです。みんな、臭いのひどい革製品では納得してくれなくて、お手ふきやおむつにも困ったんです。先文明では紙のおむつが主流でしたから電気が使えなくなって紙のおむつも再生できなくなって・・・、着る服にも困るくらい。」
楽しそうに笑うユールを見て何となくうれしくなった。
「あー、布は今でも高いよねぇ。新しい服なんて滅多に買えないよ。」
「それでも、綿花を畑で育てるようになってだいぶよくなったんですよ。」
「へぇ~」

楽しい時間が続く中、食事がもたらされた。
食事は玄米ご飯とじゃが芋のお味噌汁、鱒の塩焼きと鶏のもも肉と野菜の煮物だった。
「これを食べたら少し休みましょう。」
「え?」
俺は少し驚いた。もっと話をしたかった。
「日本に着くのは朝です、これを食べて少ししたら眠って、起きたら朝の日本に着くようにする。これが疲れない旅のこつです。」
「なるほど。」
「・・・でも、食べてすぐ寝るのはよくないですね、後で少し歩き回りますか。」
「飛行機の中で逢い引き?」
「逢い引きではありません。運動です。少し動いた方がいいんです。」
赤い顔をして否定されてしまった。ちょっとは脈があるのかな?と期待してしまった。

食後、飛行機の前方の操縦席に移動した。操縦席に座っている人はいなかった。遠隔操縦されているのだとユールが説明してくれた。
二人とも、しばらく思い思いに空を眺めていたが、やがてユールがぽつりぽつりと静かに話し始めた。
「ルナから離れたところで二人で話したかったので、こんなところに来てもらいました。実は、教室で話した後、ルナからアナタともう少し打ち解けるべきだと言われました。それで、今日はアナタに同行させてもらおうと思ったのです。」
「えっ、言われたから?」
「はい、私は・・・過去の経験から人と仲良くすることが怖くて・・・できればアナタのこともよく知ることを避けているのです・・・今も・・・」
「きっ、興味が無いということ?」
「正確には違います。・・・理解してもらうのは・・・難しいと思うのですが・・・できるだけ正確に言うと、別れがつらくなるほどのおつきあいをしたくないのです・・・アナタだけでなく・・・誰とも・・・」
「・・・友達が一人もいなくていいってこと?」
「今の私の気持ちから言えば、一人もいない方がいいと・・・」
「そんなんじゃ人生楽しくないじゃないか!!」
思わず強く発言してしまった。ユールは俯きがちだったが、ますます俯いて、もうこちらを見ていなかった。
「私は、まだ人間ができていないのだとルナやもう一人の私に言われています。でも、つらいのはいやなんです。」
ユールの声は震えていた。泣いているのかと思ったが、俯いていて顔は見えなかった。
俺は、ユールの小さな肩を抱き寄せながら聞いた。
「何がそんなにつらいんだ?」
「別れです・・・。仲良くなった人たちはみんな私達よりも先に・・・今生きている友人は・・・友人といえるものはルナしかいません・・・いえ・・・あと・・・アナタです。」
ルナは、ユールが不死だと行っていた。きっと、長い年月を生きてきて人との別れがいやになってしまったんだ。でも、それだけだろうか?つらい別れは普通に生きていてもある。沢山の別れを経験しても、人間は忘れることもできる。新しい思い出や楽しい思い出で記憶を上書きできれば、人間は生きていける。
「つらいことばかりじゃないだろ?」
「私たちは、忘れるということが今のところできないのです。」
「!!」
声にならなかった。
「楽しい思いをすると、昔の仲良かった人を思い出します。そのまま・・・ずるずると悲しい記憶までつながって行ってしまう。しかも、全てが鮮明な記憶です。記憶が・・・薄れていってくれないんです・・・皆さんが言うようには・・・」
「なっ」
「何百年も前の人の記憶が昨日あった人の記憶と同じように鮮明なので・・・気を抜くと記憶が混乱して・・・もういない人に会いに行こうとしてしまうんです・・・。そして・・・その人がいないことを思い出して・・・その人を失ったときの悲しみも思い出してしまうんです。」
何ということだろう。とても想像できない。
「ごめん、その辛さを解ってあげられるなんてとても言えない。でも・・・でも、君を少しでも幸せにしてあげたい。自分と居る間は、昔の悲しみを忘れられるように・・・君を幸せでいっぱいにしてあげる!!」
そのまま、思い切り抱きしめていた。
「結婚、考えてくれた?」
耳元でささやいた俺の質問に、ユールは、両手で俺の身体を優しく押し戻すようにほどきながら言った。
「結婚は・・・できません。理由はあります。でも、理由は言えません。理由を言って、私が結婚に条件をつけたとして、アナタはその条件を受け入れてしまうかもしれません。・・・もしそうなったら・・・私は自分を許さないでしょう。・・・だから、結婚はできません。」
「でも!」
ユールは、潤んだ目で俺をにらみつけるようにしながら続けた。
「アナタは結婚に、私との結婚に何を望んでいますか?」
「それはもちろん・・・」
ユールは発言を許してはくれなかった。
「私との間に子供が欲しいなら、五年間アナタのそばに居ます。子供ができる身体なのかどうかは・・・わからないですが、子供ができるなら産みましょう。でも、その後は、アナタが育てるか私が育てるか決めていただくことになります。」
「そうじゃない。」
「私との・・・情事を期待しているなら、私は抵抗しませんからどうぞ好きにしてください。」
「そうじゃない!!」
「ごめんなさい。それ以外の条件を・・・それ以上の条件を・・・私は提示できそうにありません。・・・怒らないでください。」
「一緒に暮らすことはできないと?」
「できません。できても・・・五年までです。なので、結婚はできません。結婚してしまったら、アナタは私の後に奥さんをもらわないでしょう?」
「・・・」
どうすればいいのか、全くわからなかった。目の前に居る人を幸せにしてあげたいだけなのに、一緒に幸せになりたいだけなのに、何故ここまで頑ななのか全く理解できない。
「いつか、何時になるかはわかりませんが、納得していただける日が来ます。どうか、私以外の方と幸せになってください。」
全く考えのまとまらない頭で一生懸命考えた。でも、いかなる答えも出てきそうになかった。
「これだけは聞かせて欲しい、俺のことが嫌いなのか?」
「・・・嫌いな人に抱いていいと言うほど私は自暴自棄ではありません。・・・すみません・・・嘘・・・かもしれません、何度も自殺を試みたことがあるので・・・でも、本当に、嫌いではありません。」
真剣に俺の目を見つめてくる瞳は嘘では無いと信じさせてくれるものだった。
「よかった、ならせめていい友達になろう。日本に着いたら、家に寄ってくれ、結婚は無理でも、食事をごちそうさせてくれ。・・・まぁ、母の手料理になるだろうけど。」
自分で言っていて照れくさくなってしまった。
「いいですね。ごちそうになります。早瀬川の町には一週間は居る予定でしたので、是非伺います。」
ユールは笑ってくれたが、その頬には涙が伝っていた。

その後はあまり話が弾まなかったが、しばらくして席に戻ろうと言うことになった。通路を席に向かっている間にユールの言っていたことを一生懸命に考えた。
不老不死という事が人類の夢のように語られるが、人類が求めているのは都合のよい死ににくく、病気にならない身体なのでは無いか?不老がユールのような記憶にまで働くことだとしたら、一体、誰が耐えられるだろう。不死が死にたくても死ねないと言うことを意味するなら気が狂ってしまうのでは無いか。自分は、もし神様が現れてどんな願いでも叶えてくれると言われても、不老不死だけは願わないようにしようと心に誓っていた。でも、その気持ちもユールに対しては失礼極まりないことなのだ。自分が当事者では無いので何とでもいえてしまうことにため息が漏れた。

ため息をついたとき、丁度自分の席に座っていたルナと目が合ってしまった。
「ユールを泣かせましたね。」
ルナがきつい口調で責めてきた。と思った。でも違った。
「まぁ、しようがないですね。ユールについて、聞きたいことがあったら私に聞いてください。私に聞くべき事と本人に聞くべき事の区別くらいできるでしょ?」
『ありがとう』
ユールと俺は同時に同じ言葉を同じ口調でルナに返していた。思わず二人してお互いを見つめ合った後笑い出してしまった。
ルナはあきれたように、仲のよろしいことで、と言っていたが、どこかうれしそうだった。
席に座ると、アルテミスが毛布を持ってきてくれた。そして飛行機の中は薄暗くなった。

俺は眠くなるまでいろいろな話をした。家のこと、仕事のこと、家族のこと、将来の夢のこと。そして、ユールに刀鍛冶のことを聞いた。ユールはもう失われてしまった技術、日本刀を打つことのできる職人だった。そもそも、自分がいつか使うであろう刀を鍛えるために修行したらしい。本人はやることが無くて暇だったのだと言っていた。ユールは、いつか一振りの刀を目の前で鍛えて見せてくれると約束してくれた。
気がつくと、ユールは寝息を立てていた。
ルナが話を続けるなら後ろの方の席に移動しようと言ったので俺とルナは飛行機の一番後ろの席に毛布を持って移動した。

「ユールは何度か自殺しようとしたんだってね。」
俺は、何となく気になって聞いてみた。
「・・・本人が言ったのですか・・・困ったものです・・・。」
と言いながら、ルナは少し考える様に黙り込んでから話し始めた。
「ユールは男性と女性が居ます。身体は一つなのですが、全くの別人格です。」

ルナの説明はこうだ。
女性のユールは世界が滅んでからしばらくして突然発生したらしい。
最初のユールは男性で、女性のユールが発生してからまだ六百年しか経っていない。しかも、女性のユールと男性のユールはかわりばんこに現れているので、女性のユールはせいぜい三百年しか人生を歩んでいない。男性のユールはすでに一千年の経験を積んでいる。
ただ、共通していえることは、二百年目頃に二人とも自殺を何度も試みているということ。飛び降りや頭を吹き飛ばす程度は当たり前にやっていて、普通の人なら間違いなく死んでいるはずの状況でも死ぬことは無かったという。男性のユールは火山の火口に飛び込んだり、最後は太陽に向かって飛び込んで試たらしい。ところが、地上に残っていた一本の髪の毛から身体が再生するに至って完全に諦めたという。
ルナが言うには、ユールは何かの役割を背負わされていて、役目を終えない限り死ねないのでは無いかということだった。
しかし、髪の毛一本から再生してしまうというのは眉唾としか思えなかった。本当にそうなら髪の毛が抜けるたびに新しい自分が生まれて、自分だらけになってしまう。完全に怪奇の領域だ。増えないというなら、ユールを一人に制約しているものが何なのか、そんなことを考えてしまう。しかも、記憶をどうやって引き継いだのか。脳みそは太陽の中だ。

「どこまでがほんとでどこからが冗談?」
「私はこんな事で冗談は言いません。・・・といっても、太陽に飛び込んだというのは私が生まれる前のことなので本当かどうか私には判りかねます。」
「ですよねぇ」
何となく安心した。
「ユールは、多分アナタのことが大好きですね。」
「えっ、ほんと?」
「私はこんな事で冗談は言いません。」
「・・・でも・・・結婚はしてくれないって・・・」
「そうでしょうね。」
「理由判る?」
「・・・もちろん判ります。でも、私の口からアナタに伝えることはできません。」
「『自分のことを抱きたければ抱け』とも言っていたよ。」
「・・・抱いてあげればいいじゃ無いですか、喜びますよ・・・多分。」
「でき無いよ、結婚もしていないのに・・・」
「立派な貞操観念をお持ちで・・・」
「茶化してる?」
「気がつきましたか!!」
「・・・はぁ・・・本当に一緒に幸せになりたいと思っているんだ。」
「安心してください。ユールはあなたが思っている以上にアナタのことを理解しています。」
「じゃぁ何故!受け入れてくれない。」
「・・・納得いかないでしょうが・・・アナタのことが本当に好きだからです。彼女は健気な女性なのです。そう・・・とても昔・・・彼女が会話ができるようになったそのときにはすでに・・・彼女は健気で思いやりのある女性でした。彼女は、明らかに男性のユールの理想から生まれたと私は思いました。七百年間滅び行く世界と再生してゆく世界を見つめていた人が描いた理想。まさに女神!!の訳は無いですが、彼女は絶望しつつあった地球再生のために働く有志の希望になりました。おそらく、再生の象徴だったのです。」
「・・・彼女にはつらそうな役回りだね。」
「全くです。でも、彼女はがんばりました。そのおかげで今の地球があります。」
「そんなに凄かったんだ。」
「はい。私にはそう見えました。」
「どんな事をしたの?」
「簡単に言えば、人間関係を非常によく修復してくれました。地球再生には当たり前ですが非常に多くの人々が関わっていたので、問題も多かったのです。」
「そうだよねぇ、彼女、ほんとにいい人だよねぇ。」
「・・・そうですね。」
ん?突然冷たくなったぞ。棒読み?何か間違えたかな?
ルナが立ち上がって元の席に向かいながら言った。
「そろそろ一眠りしましょう。」
やはり、何か間違えたらしい。・・・女性は難しい。
「わかった」
俺も自分の席に戻り、毛布をかぶった。ユールの事を考えながら目を瞑った。好きな人と愛し合え無いなんてちょっと悲しい。何とかできないかなぁ。と。
振り向いて寝息を立てているユールを眺めた。・・・やはり答えは出ない。もう一度目を瞑った。

辺りが突然明るくなった。
気がついたら眠っていたらしい。いろいろあって疲れていたのだろう。
慌てて飛び起きると、ユールも色っぽくのびをしていた。
「おはようございます。」
ユールの元気な朝の挨拶だった。
「すみません。お話しして頂いていたのに途中で眠ってしまったみたいで・・・」
ユールは本当に申し訳なさそうだった。
「おはよう。いやいや、俺も調子に乗りすぎてたみたいで、気遣ってあげられなくてごめん。」
なんか、相手が年下に見えるので、どうしてもぶっきらぼうな言い方になってしまう。今更改めるのも変だからこのまま行こう。そんな事を考えていると、
「歯ブラシと手ぬぐいをお持ちしました。顔を洗ってはいかがですか?」
とアルテミスがお盆に歯ブラシ、手ぬぐい、石けんにカミソリを載せて持ってきた。俺はお礼を言うと、一式受け取って洗面台に向かった。少し寝不足気味だが、気持ちのいい朝だった。

席に戻ると、朝ご飯が準備されていた。知らない魚の干したものにオムレツと海藻のお味噌汁と玄米そして大根の漬け物。おいしく頂いた。
「この魚は何だろう?」
と独り言を言っていたら、隣のユールから返事が返ってきた。
「鯵です。鯵の開き。海で捕れる魚で、開いて内蔵を取って干したものを火であぶって食べるんです。私の・・・もう一人の私の好物なんです。」
「へぇ、確かにおいしいね。生の魚を焼いたのとはまた違った味わいがたまらない。」
「ふふふっ、私もそう思います。」
うれしそうにほほえみながら楽しい食事は進んでいった。

再び、アルテミスの歌うような声が響いた。
「まもなく、日本の早瀬川の町に到着します。現在の現地の時刻は六時四十分です。」
俺は、何となく呟いていた。
「早いんだなぁ。」
ユールが不思議そうにこちらを見てきいてきた。
「どうしたのですか?」
「いや、行きは何となく眠れなくて、凄く長く感じたんだ。一人だったしね。でも、帰りは楽しかった。ユールも居てくれたし。」
「そう言ってもらえるとうれしいです。」
ユールは本当にうれしそうに見えた。
「アナタは、私にできた二百年ぶりの友人です。ご飯、ご馳走して頂く約束は忘れていませんからね。」
悪戯っぽく喋るユールに勿論と答えながら両親にどう紹介したものか考えてしまった。恋人とは言えそうに無いのでやっぱり友人なんだろうなと思った。
アルテミスがやってきて、食事の終わった食器を片付けていった。いよいよ故郷に到着だ。三年ぶりか、変わってるかなぁ。自分の家と家族に思いを馳せた。
「ねぇユール。」
「何でしょう?」
「家族に恋人だって紹介していい?」
「またそう言う事を・・・私を困らせて楽しいですか?それとも私をしばらくアナタの家に置く決心が付きましたか?」
「違う違う、冗談だよ。」
「・・・私はどちらでもいいので、アナタが決めてください。私は・・・覚悟も決心もできていますから・・・私の事よりアナタの気持ちを大切にしていいのですよ。」
とユールは笑顔で言ってくれた。気を遣われているのがよくわかった。きっと、本当にどちらでも受け入れてくれるのだろう。一緒にずっと暮らすという事以外は・・・そう思うと胸が痛んだ。
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2012/12/19(水) 11:23:09|
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