第九章 一先ず謁見?
翌朝、ルナに叩き起こされた。
「二人とも起きてください。彼女達が気が付きました。」
ルナは、急いでいる様子も無く、淡々と俺とユールを起こしていった。
「簡単に状況は説明しておきましたので、驚かせる事はありません。適当に急いで準備して下さい。」
ルナの指摘の的確さはよく知っているが、なんていい加減な急かし方なのだろう。
俺とユールは、身なりを整えて、急いで隣の部屋に向かった。
整えられた布団の上に二人の少女が並んで座っていた。
「・・・!お父様!!」
へ?
二人の視線はユールに向かっていた。
「ええ。無事で何よりです。」
ユールの答えに、驚きながら、両者を代わり番こに見てしまった。
「お父さま?」
俺は、相変わらず間抜けな。
答えたのはユールだった。
「はい、男の私の娘達です。」
「なっ」
それならそう言ってくれたらもっと協力もしたのに。とは思ったが、協力できることもそんなに無かったか。その時、少女の一人、幼い顔をした方が言った。
「兄さんが、切られて!」
ユールは、落ち着いた声で応えた。
「悠太は、けがをしたようですが、致命傷では無いとルナは判断しています。とりあえず、最近担ぎ込まれた人がいないかを探しましょう。」
ルナは、昨日見つけた楽器を持って来て少女達に渡した。
「雨に当たっていましたが、修復しておきました。」
「兄さん・・・」
俺は、場違いだとは思ったが、一応恐る恐る切り出した。
「・・・あのぉ~。出来れば紹介して貰って良いかな?俺はタケル、須塔武だよ。」
「すみません。この二人は、鈴木音羽と涼音です。私の娘達です。」
ユールの紹介に合わせて二人が「音羽です。」「涼音です。」と自己紹介した。
「とりあえず、王城に向かいましょう。衛兵詰め所がこの都で最も情報が集まる場所です。」
ルナが提案して、皆が首を縦に振った。
ユールとルナはいつものローブと杖の出で立ち、涼音ちゃんはお兄さんの楽器を大事そうに抱えていた。
王城は直ぐそばだった。宿を出たら直ぐに見えた。城の周りは堀と塀に囲まれており、建物はあまり見えない。
ユールによると、先文明時代にこの地にあった城を復元した格好になっているらしい。中身はかなり進んだ技術を使っているらしいが、何というか、荘厳ではあるが華奢な印象のある不思議な建物だ。
「あの高いのが天守閣です。いわゆる展望台ですね。本物は男の私も見た事はありません。生まれる前に焼け落ちてしまったそうです。」
「面白い建物だねぇ。」
「昔の日本では珍しくない様式なのですが、今はこの城だけですからね。伝統も何も失われてしまうと修復は困難です。」
ユールはどことなく悲しそうだった。城門は橋を渡ったところにあってその直ぐ内側に衛兵の詰め所があった。
ユールとルナがブローチを見せると兵士は、
「賢者様、良くいらっしゃいました。」
と挨拶をした。ユールは王城では賢者様と言われているらしい。
ユールが最近担ぎ込まれたけが人がいないか聞くと、男性が一人担ぎ込まれ、まだ目を覚まさないと教えてくれた。今、学院の医者が面倒を見ているそうだ。
城の医療室にいるというので、急いでそのけが人のところに向かった。
そのけが人は目当ての人物だった。
音羽ちゃんと涼音ちゃんは「兄さん」と言いながらすがりついた。
ユールは、ルナから杖を受け取ると、その杖をお兄さんの身体の上にゆっくり置いた。すると、杖が身体にゆっくり溶け込み始めた。
「えっ」
俺は、驚いたが、驚いているのは俺だけだった。これって普通の事だったっけ?
「この杖は、治療の為の道具でもあるんですよ。ユールの身体の中の機械と一緒です。話しは聞いていますよね。」
とルナが教えてくれた。
「あぁ、聞いた。身体に溶け込むほど小さい機械なんだ・・・」
「実際、そんなに小さくはありません。身体の隙間に無理矢理入っていって治療をしながらまた集まって来ます。」
「よく判らないけど・・・」
ユールはお兄さんの服を脱がした。肩口から大きな傷があったが、とりあえずはふさがっている様だ。ユールはお兄さんの身体に広げた両手をのせ集中し始めた。
すると、傷が盛り上がり、瘡蓋が溶ける様に消えて傷はすっかり無くなってしまった。
「さすがに、出血が多くて、少し、脳に障害があるようです。修復するのに広範囲の記憶を必要とするので時間がかかりそうです。」
とユールが言った。普段は汗一つかかないユールの額にうっすらと汗がにじんでいた。つらそうだ。
何もする事が出来ず、ただ待っているだけの時間が過ぎていった。
ルナが何度かユールの額の汗をぬぐった。
音羽ちゃんと涼音ちゃんはひたすら祈っていた。
そんなとき、扉が開いて数人が入って来た。
衛兵の制服に似ているが色違いを来ている人が四人と上等な着物を着た女性が一人だった。
ルナが
「王様、ご無沙汰しています。」
と軽くお辞儀をした。
「王様?」
俺は素っ頓狂な声を上げてしまった。
「ユールは集中しています。今はご挨拶申し上げられません。ご容赦下さい。」
とお辞儀をしたルナに対して王様は、
「構いません。けが人が運び込まれていた事は知っていましたが、まさか、悠太殿だったとは、連絡出来ず申し訳ない事をしました。」
と返した。
思いがけない謁見にどうして良いか判らずぽかんとしていると、ルナは、
「こちらは須塔武。融資の依頼に来ました。」
と説明した。俺は慌てて、
「須塔武です。初めまして。」
と何とか返す事が出来た。ところが、ルナに
「申し訳ありません。礼儀のなっていない男で、気を悪くしないで下さい。」
と言われてしまった。
王様は、にこやかに笑いながら、
「良いのですよ、そんなものです。」
とルナを諭す様に返事をした。俺は混乱していた事もあり、何の遣り取りなのかよく判らなかった。
「今は、お詫びをしようと参ったのです。後ほどまた。」
とだけ告げて、王様は退出してしまった。
ユール以外、皆頭をたれた。
それからさらに一時間ほど経って、ユールがため息をついた。まるで今まで息をするのも忘れていましたと言う様なため息だった。そのため息が合図であったかの様に杖がお兄さんの身体から徐々に姿を現し、一本の杖に戻ると同時にお兄さんは目を開けた。
しばらくぼうっとしていたお兄さんははっと気が付いた様に起き上がり、
「ここは?」
と言って辺りを見回し、
「お父様、涼音、音羽。」
と驚いた様に立ち上がろうとした。ユールはその動きを宥める様に押さえ、
「慌てて動かないで。」
と優しく声をかけた。
「貴方は十日ほども眠っていたのですよ。」
と言った。
「そうだ、俺は、盗賊に切られて、通りかかった隊商に助けられたんだ。その後は・・・。音羽、涼音、奴らに酷い事されなかったか?」
「大丈夫。私達も気が付いたらお父様に助けられていたの。」
と音羽が答えた。
「・・・そうか・・・」
お兄さんは複雑な表情をした。単純には喜んではいけないと言うような、そんな顔だった。
静寂をルナが破った。
「先ほど、王様がお見えになりました。」
ユールは、少し考えてから、
「では、先ず謁見しましょう。」
と言った。
ユールが謁見したいというと、直ぐに王様の前に通された。王様は御簾の中から降りてきて、ユールに挨拶した。
「賢者様。よくお越し下さいました。悠太殿の件は気付かなかった事とは申せお知らせ出来ずお詫びのしようもありません。」
え~っ、王様がユールに頭を下げてるぅ。
ユールは、
「私も思うところがあって伝えなかったのです。気にする必要はありません。」
明らかにユールは偉そうだ。
俺は、小声でルナに
「ユール、偉そう。」
と告げると、
「当たり前です。初代国王ですよ。」
と返された。・・・忘れてた。そうだった。
その後、俺が融資の依頼できたこと、一緒に旅をしてきた事など、さしたる雑談も無しに淡々とした会話があった後、王様から
「では、結論は早いほうが良さそうですね。今日中に手続きをして下さい。明日審議しましょう。賢者様と供にまた城へおいで下さい。」
と有り難い言葉を頂いた。
俺たちは手続きをする為にまた衛兵の詰め所に戻った。手続きはユールの助言もあり悩む事もあまりなく出来た。融資の希望金額は、よく判らなかったので王様におまかせすることにした。
帰り道、丁度お昼時だったので、どこかでご飯を食べようという事になった。お兄さんが、トウキョウ広場と言われているところの近くに行きつけの店があるからという事で、そこでご飯を食べる事になった。
「トウキョウって時々聞くけど、何のことなの?」
俺が聞くと、ユールが
「先文明後期の王都の地名です。特に東京広場は昔、東京駅という交通の要所があったんです。そこから陸路で日本中に行ける鉄道という交通機関があったんです。」
「へぇ、今と比べると、どれくらい広さが違うんだろう。人が住んでいた地域の広さって。」
「今、王都を含めて六つの町を中心に十万人弱の日本人が生活しています。先文明の後期では、王都の周辺だけで百万人以上の人々が生活していました。」
「十倍?以上!!」
「日本全体では一億二千万人以上の人が住んでいた時期があります。」
「そんなに・・・」
「私もその頃には生きていませんが、日本の大きな四っつの島と周辺の小さな島まで殆どの陸地にはあまねく人が住んでいたようです。」
「・・・想像も出来ないね。どこに行っても人がいるって事だよね。」
「今の日本の町のある地域は、町の間も含めて人の住んでいない地域は無かったといわれています。」
「・・・今は、港町と早瀬川の間には人が住んでいないよ・・・。」
「それだけ人が多かったのですね。」
ユールと俺の話を皆興味深そうに聞いていた。
「ここがおすすめの店だよ。この店の舞台も使わせて貰った事があるけど、料理はこの辺りではここが一番だね。」
お兄さんはまるで自分の店にでも入るように扉を開けて堂々と入っていった。
店は、十席ほどの卓が無作為に並べられており、厨房の側に対面卓の席がいくつかと、一番奥に舞台があり、大きな楽器がいくつか置かれていた。
お兄さんは、常連らしくお店の人が何も言わなくても、『俺の席』と言わんばかりに指定席と思われる舞台がよく見える端の方の席に座った。舞台は昼間は誰もいなかった。
お兄さんは、
「親父さん、初めての人連れてきたから献立表出してくれよ。」
と厨房に向かって大きな声を出した。
すると、奥から献立表を持った女の子が現れ、卓に持って来た。
「今日のお勧めは豚のシェフにおまかせランチです。」
シェフ?ランチ?聞き慣れない名前に目を回していると、ユールが
「このお店は外国の言葉を使うのが好きなようですね。献立表には日本語のルビが振ってありますが、シェフはこの店で調理する人の中で一番偉い人、ランチは昼食です。今の日本では外来語は殆ど使われませんからね。」
と丁寧に教えてくれた。
俺は胸をなで下ろしながら
「知らない言葉が飛び出してドキドキしちゃったよ。」
と言って笑った。
お店の女の子は、
「悠太さん達以外は一見さんが二人ね。誰なの?」
と親しそうに話し始めた。
「ああ、父と父の連れだ。」
「お父さんなんていないじゃない。私顔知ってるよ。」
「あぁー。」
とお兄さんは困った顔をしてから。
「父の妹と父の妹の連れだ。」
と言い直して内輪の失笑をかった。
ユールは、
「ゆりです。お見知りおきを、」
と言って会釈した。
「タケちゃんの妹かぁ。そう言えばにてるかなぁ。私はマキ。よろしく。」
まだ、十二歳か十三歳に見えるが、はつらつとした女の子は自己紹介した。
「俺はタケル。」
と自己紹介すると、女の子は
「タケちゃん二人目かぁ。じゃぁタケルちゃんで!」
と言ってケラケラ笑った。
「タケちゃん?」
と疑問形でユールに向かって首をかしげたら、
「えぇ。彼が・・・あっ、兄が『俺の事はタケちゃんって呼べ!』と言って自己紹介したらしいんです。」
と言った。
そうか、もう一人のユールは結構ひょうきんな性格をしているんだなと勝手に納得した。
ユールはマキちゃんに
「私は鶏肉を、調理方法はシェフにおまかせで。」
と注文した。俺もよく判らなかったので「同じもので」と頼んだ。
残りの三人は、「いつもの」を頼んでいた。
「結局献立表なんて要らないのよねぇ」
と言いながらマキちゃんは厨房に戻っていった。
マキちゃんと入れ違いに厨房の対面卓の向こうにがっしりしたオヤジが現れて、
「悠太、今日はやっていくのか?」
と聞いてきて、お兄さんは、
「いや、今日は俺病み上がりなんだ。」
と返して、オヤジさんに「お前が病むはず無いだろう。」がははと笑われた。
気さくな良い店だと思った。
俺は、何となくお兄さんに質問してみた。
「お兄さんは楽師をやってるの?」
お兄さんは、自分の事だと理解すると、
「うん、旅の楽師をやってる。演奏が主だけど楽器を教えたりもするよ。あっ、敬語使った方が良いかな?年上みたいだし・・・」
「いや、全然気にしないよ。何で楽師になろうと思ったの?」
「母が旅の踊り手で、父と結婚して自分たちも父と生活する上で迷惑になら無い様に旅をする職業に就こうと思ったのさ。」
と言うと、ユールが突然立ち上がり、
「悠太さん。その話はやめましょう。お願いです。」
と慌てたように話しを遮った。何かまずい内容があったのかといぶかしんでみたが、
「お母さんの職業を継いだ形だったんだよね。おかしく無いじゃ無い?」
とユールに探るように聞いてみた。ユールは、
「そっ、そうですね。何もおかしくないですね。」
と言って座った。
お兄さんは、しばらく黙ったまま、あごに手を当てて、考え事をしているようだった。
やがて、食事が運ばれてきた。俺とユールは同じものを頼んだつもりだったのに、ユールには鳥の照り焼きが運ばれてきて、俺には鳥の半身を煮込んだ料理が運ばれてきた。俺は思わず、
「同じものじゃ無いの?」
と聞いてしまったが、マキちゃんは、
「だって、料理長のおまかせなんだから、同じとは限らないでしょ?」
と、悪戯っぽく片目をぱちりとつむって戻って行ってしまった。
「まあ良いか。」
と食べ始めてみたら、酸味のある露が絡んで柔らかく煮込まれた鶏肉は食べた事の無い美味しさだった。
「この鳥は鶏だな。この大きさだと結構若い鶏だね。甘酸っぱくて美味しい。」
と言うと、涼音ちゃんが、
「でしょう。この料理には、ヨーロッパが原産の果物が使われているんですよ。」
と教えてくれた。
食事をしながら雑談をしていたが、しばらく静かだったお兄さんが、突然
「タケルさんって職業は?」
と聞いてきた。ユールは、ため息をつくように「悠太・・・」と呟いたが、俺はよく判らなかったが、
「早瀬川で鍛冶屋をやっています。」
と元気に答えた。
「融資の目的は?聴いていいかな?」
とお兄さんは続けざまに聞いてきた。
「水車を作ろうと思って、川の流れを利用した動力で、槌を動かしたり、ふいごを動かしたり、鍛冶屋の助けになると思って。」
お兄さんは、
「水車?」
とユールに質問した。
ユールは食事を中断して長い時間をかけて身振り手振りを交えて水車についてお兄さんに説明した。しかし、その顔はいつもの表情よりも何か心配事があるときの顔に近かった。
説明が終わるとお兄さんは、「成る程、判ったよ。」と言って、ユールに向かって頷いた。
「俺たちは、本当は今頃早瀬川にいる予定だったんだ。色々あって今ここにいるけど、直ぐに向かうつもりだよ。もしかしたら一緒に行けるかも知れないね。」
とお兄さんは俺に説明してくれた。ユールは、何か言いたそうだったが黙っていた。
「その来るはずの人が来なかった事と、王都は出たという情報、そして最近盗賊団が出ると言う情報から最悪の事態を想定していたのですが結局、あの大立ち回りになってしまったという事です。」
と解説したのは、ルナだった。
その後は、お兄さんも雑談に参加した。
雑談の中で、俺が温泉で倒れたときの話になった。ルナが
「ユールが彼をお姫様だっこで運んだんですよ。」
といって笑った。おれは、
「今度は俺がお姫様だっこをするんだぁ。」
と大げさにおどけて見せた。するとお兄さんが
「無理無理、父さ・・・ユリさんは見かけよりずっと重いんだぜ。」
とおどけている。俺は思わず、
「ほんと?」
と聞き返した。ユールは恥ずかしそうに
「はい、だいたい八十キロくらいは有ります。」
と小声で恥ずかしそうに答えた。見かけの倍近い体重だ。
「例の機械のせいです・・・」
と付け加えた。
そうだったんだ・・・。
そんな旅の話題がしばらく続き、長めの昼食は終わりを告げた。ユールはどことなく安心したようだった。よく判らないが、良かった良かった。
その後、俺たちは別々に行動する事になった。
お兄さんと音羽ちゃんと涼音ちゃんはお母さんのところに一度戻って、もう一度旅立ちの準備をするらしい。お母さんは、子供を産んだばかりで動けないらしい。
俺とユールとルナは都の大通りに有るお店を覗きながら散歩をした。そして、ユールは、昔話を始めた。
「王都の最初の住人は王城のあるあの場所と、昔新宿御苑と言われる大きな公園があった場所に建てられていた停滞型シェルターから出てきた千人弱の人々と宇宙植民地惑星からの移民約二千人が停滞型シェルターの周りに作った町が始まりなのです。今でも、宇宙植民地惑星には約二万人の日本人がいますが、生活の激変を恐れて降りてきません。」
「停滞型シェルターって学校の歴史で教わったけど、時間の進行が遅くなる仕掛けを持った大きな球形の建物だったって・・・本当なの?」
「はい、時空間を殆ど切断してしまって、時間の流れを調整する事で建物の中で五十年を過ごすと、外の時間は五百年以上も経ってしまうと言う技術です。日本のものは七百年で設計され、両方とも一年と狂わず扉が開きました。正確さという意味では恐ろしい技術力ですね。中の時間で扉が開くので時間の経ち方が僅かでも違うと外の時間では大きな差になってしまうんです。一度動き出してしまうと外から扉を開く事は出来ません。世界中では地球の再生中に開いてしまって再調整に私達が手を貸す羽目になった国やいまだにいつ開くか分からないものも世界中に数多くあります。酷いものは・・・中で発生した病気で死に絶えてしまっているものまでありました・・・私もその開封に立ち会いました・・・中で生活出来る最長の時間は原子炉の性質上約百年が最長でした。百年有ればどんな事でも起きうる。出てきたら、全員精神的に病んでいた事もあります。どんなに大きくても、数百人しかは入れないのですから、村よりも狭いところに数百人が閉じ込められて・・・生活空間の設計が甘いと食べ物も資源も禁欲生活を強いられる結果になりますから・・・。でも、日本は良い例の一つでした。少なくとも、皆元気で再生した地球の地を踏めたのですから。」
「日本って凄い国だったんだ。」
「技術的には凄い国でした。停滞型シェルターの基本設計を各国に提供したのは学院の前身となった団体です。その発祥の地も日本でした。当時の日本は優れた社会主義国家でもあったので、学院の思想もさしたる弊害も無く受け入れられました。日本は、問題をあらかじめ発見して対応する解決策を講じる能力には乏しかったのですが、与えられた状況で臨機応変に切り抜ける能力と良いモノを見つけるとそれを進化・発展させる能力には定評がありました。」
「その能力が役に立ったの?」
「上手に娯楽を見つけて上手く発展させたので精神的に抑圧されなかったのだと考えています。」
「成る程。」
「そして、シェルターの扉が開いた三百年前、学院も協力して計画的に町作りを行いました。しかし、最初の数十年は人口は減少の一途だったのです。怪我、病気、慣れない環境に人口が安定して増えるようになるまでさらに五十年近い時間が必要でした。」
「その間、どんどん技術が失われたんだね。」
「その通りです。元々、手に入る資源や環境に合わない技術ばかりだったので、失われると言うより、最初から殆ど役に立たなかったのです。色々夢を見ていた技術者は失望していく事になります。想像していたよりも現実は厳しかったのです。運用開始から百年以上を経過したシェルターの資源はみるみる内に枯渇し役に立たなくなりました。」
「・・・」
「でも、貴方は水車を復活させてくれると言っています。水車は先文明の初期から活用され末期まで使われ続けた優れた技術です。・・・私は嬉しいんです。・・・嬉しいはずなのです・・・」
「泣いているの?」
「お願いがあります。タケルさん。今夜、貴方の答えを聞かせて下さい。」
「えっ、今夜?」
「はい。実は、少し事情が変わったのです。日本の王城に詰めていたルナイレブンが悪い知らせを持って来たのです。私は明日の審査が終わったらヨーロッパに行かなくてはいけません。戻ってくるべきか、今夜教えて頂きたいんです。」
「・・・俺は・・・」
「宿の名前の覚え書きをお渡しします。道が判らなくなったらこの紙を近くのお店の人に見せれば道を教えてくれると思います。」
「え・・・えぇとぉ・・・」
「夕方まで別行動しましょう。金貨を一枚差し上げます。無駄遣いはしないで下さいね。」
「あっ」
行ってしまった。ルナもいない。一人で答えを出せという意味か・・・。
俺は、正直、途方に暮れていた。
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学
- 2013/03/30(土) 21:40:58|
- 再生した地球にて
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年度末には、いろいろ期末処理があるものですが、
もちろん決算もそうですし、
成績評価もそうですね。
子供の学校の成績が落ちていた時、
親はどうすればいいのでしょう。
とにかく、勉強以外のなにかを伸ばすなら仕事に結び付けてほしい。
ということで、何をしているかわからないけど、
夜中までパソコンに向かっている子供には
「ITパスポート試験を受けろ。」と言ってみた。
悲鳴を上げていた。w
- 2013/03/28(木) 12:40:14|
- つれづれ日記
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ちょこちょこ載せている小説だけど、
チェックがすんだら次の章を載せようと思う。
ちなみに、書く方は最終章に突入。(したと思う。)
ついでに、次回作のプロットも始まっていたりする。
舞台は一緒、時は今載せているお話の直後。
ルナ視点で書こうと思っている。
人間と同じ思考能力と感情を持つコンピュータの話。
・・・わかりづらさ爆発!!
では(^^)/~~~
- 2013/03/26(火) 12:49:53|
- つれづれ日記
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私は行きました。
先週の土曜日。
私の親と、子供を連れて・・・
新宿御苑へ。
嫁は仕事。
アルコール類持ち込み禁止ということで、手荷物検査された。
でも、園内では、アルコールを飲んでいる人が!!
私も含めてw
- 2013/03/26(火) 12:44:12|
- つれづれ日記
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嫁が、ドラクエ10を始めた。
始めたきっかけは、WiiU版のドラクエ10 ベータ版。
私と子供が遊んでいたら、あとからキャラクターを作って、あっという間に三人の中で最強に躍り出た。
ベータ版に満足できなかったのか、今更、WiiUを購入した時に物置行きになっていたWiiで
ドラクエ10をしたいと言い出した。
仕方がないので、池袋のビックカメラにドラクエ10とセンサーバーとWiiリモコンのセットを買ってきたのが、先週の水曜日。
現在、レベル18?
成長の遅いドラクエ10とは思えないやりこみ様。
ちなみに、テレビは、私が先月買って寝室に設置した時、
嫁が「バカだろう、お前バカだろう。」と散々に言っていたテレビを
その嫁が占有している。
寝室でテレビを見るはずが、
寝室で嫁のドラクエ10の画面を見る羽目になってしまった。
ふぅ。
なんだかなぁ。
- 2013/03/25(月) 12:49:47|
- 風来人観察日記
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第八章 盗賊団と日本刀
港町は意外に近かった。まぁ、最初から短い距離だとは聞いていたが、ゆっくり移動していたのに十五時過ぎには付いてしまった。港町は、街道の三叉路にもなっている。
西の早瀬川までの街道と北の富士五湖を経由して王都の北側から東に回り込む環状街道との分かれ道なのだ。
今の日本には町らしい町は王都を除いて五つしか無い。本当は王都だけで日本国民全員が住めて事足りるくらい人口が少ないのだが、いろいろな作物を採る為に離れたところに町を作って隊商が組まれているのだ。北の寒い地域で採れるもの、高地で採れるもの。広い土地が必要な家畜。そういったいろいろな条件で町が増えていった。というのは、ユールから聞いた話だ。
港町には宿屋がいくつか有る様だった。その中でも、ユールが良く泊まるという宿に厄介になる事になった。少し小さめの宿で夫婦が営んでいて手入れの行き届いた宿だった。
晩ご飯は見た事も無い魚の煮物だった。甘辛く煮てあって見た目はかなり恐い魚だったが、非常にご飯に合った。味噌汁にも魚と海藻(わかめ)が入っていた。
夜は、一部屋に布団を三つ敷いて川の字になって寝た。何故かルナが真ん中だ。久しぶりの布団でぐっすり眠れた・・・となるはずだった。
実際には、夜中に何度か起こされる羽目にはなった。と言うのも、ルナの寝相が悪い。おなかに頭突きが入る事一回、顔面に蹴りが入る事二回。まさに、くるくる回っていたという感じだ。
ユールも何度か起こされたらしく、起こされるたびに布団をかけ直してあげていた。どうやら慣れている様だ。
朝ご飯は噂の刺身が出てきた。白身魚の生の切り身で少し甘めの醤油につけて食べた。味は淡泊で、でも歯ごたえが面白いと思った。ご飯のおかずとしては少し物足りなくて、醤油の味でご飯を食べている気になった。最初は生臭いと思っていた海の幸のお味噌汁も慣れてくると美味しかった。漬け物が良い味を出している。
宿の人の話では、刺身は今朝早く海で採れたものだそうだ。肌寒くなってきているので、早朝の海での仕事はつらそうだ。いろいろな魚の旬の時期になると王都から泊まりがけで食事だけを目的にした人も来るので宿は時期によっては大賑わいだという。今は、白子も桜エビも時期が終わって落ち着いた時期という。
「ここから王都までの間に盗賊団が出没しています。」
ユールはいつになく真剣に続けた。
「ここから王都までは馬車で丁度一日の距離です。街道が合わさって交通が多くなるこの道を選んでいるのだと思います。」
俺は、盗賊団という聞き慣れない名前について聞いてみた。
「盗賊団って、今まであんまり聞いた事無いよねぇ。」
ユールは困った顔で応えた。
「はい。今までは居ませんでした。町の中に現れる泥棒や空き巣は多少は居ましたが、小さな隊商を襲って強奪するような盗賊団が現れたのはここ三百年で初めてです。人が増えて来るとどうしてもこういう人たちは現れてしまうようですね。」
「小さな隊商って、俺たちの見た目ってまさにそれじゃ無いか。馬車に荷物を積んでいると思われたら襲われるんじゃ無いか?」
「見つかれば、襲われる可能性は非常に高いと思います。」
おいおい、あれ?でも。
「ひょっとして、最初から襲われる前提で馬車なのか?旅の最初に言ってた事って・・・」
「そうです。私達は、襲われる気満々で馬車に乗って、最低限の荷物で移動しています。最初に言ったもう一つの目的です。・・・約束・・・覚えていますか?」
「お・・・覚えてる。」
「必ず守ります。タケルは必ず守りますから、私を信じて言うとおりにして下さい。」
「・・・わ・・・わかった。」
さすがに元気がなくなった。
「ゆっくり移動するので、王都へは夜中に着く事になります。盗賊団に襲われれば明日の到着になる可能性も高いでしょう。」
よもや、自らが囮になって盗賊団をおびき出すつもりだったとは、ここでやっと最初の日にもう一つの目的と言った訳が説明されたと言う事か。
ルナは馬車を動かし初めて町から出ると、驚くようなことを切り出した。
「今朝早くに、車庫に不審な人物が来たようです。見張りのおじさんがこの馬車は王都に向かうのかと聞かれたそうです。」
少し時間をおいて、ユールが応えた。
「そうですか、斥候とみて良さそうですね。」
「はい、予定通り、空の箱を組み立てて荷物を積んでいる様に見せておきましたので、狙われる可能性は高いかと思います。」
ルナは、冷静に、そして俺に聞こえる様に返事をした。
「タケル、ローブを着ていて下さい。何があっても脱がないで下さい。出来れば、フードも外さないで下さい。」
とユールは俺にお願いしてきた。俺は、理由も聞かず従う事にした。元々、厚手の暖かいローブは、この秋の寒い時期の旅には必需品だった。脱ぐつもりは無かったが、フードも含めて念を押された。
馬車は、昨日と同じようにゆっくり走っていたが、港町の宿屋に作ってもらったお結びと漬け物の昼ご飯を食べた後はさらにゆっくり走り、ユールは何かを探している様に道を真剣に見つめていた。
お昼から二時間が過ぎようという頃、ルナが、小声で
「人の気配が近づいています。四人は居そうです。接触見込み時間まで三〇分です。」
と言った。
それとほぼ同時に、ユールが、「馬車を止めて下さい」と言って飛び降りた。飛び降りた先には、旅の音楽家が持って居る様な弦楽器が落ちていた。ユールはそれを拾い上げ、
「間違い有りません。彼のリュートです。」
と言った。リュートには血が付いていた。ユールはそれをルナに渡すと、「分析と修復を」と告げた。
ルナは、馬車の中に移動し、右側の座席代わりになっていた箱を開け、その中からいくつか道具を取り出すと、箱の上に並べ、楽器を固定して調べ始めた。
「血液は男性のものです。彼の遺伝子サンプルはありませんので誰の血液かは判りませんが・・・。彼の血族の可能性は七十八パーセントです。血液の量などから、致命傷では無かったと思われます。手当をすれば命に別状の無いレベルのけがでは無いかと・・・。修復には八時間必要です。雨にやられて相当痛んでいます。その前の痛み具合は予想するしか有りませんが、一週間から十日放置されていたと思われます。」
難しい話は分からないが、何か目的のものを見つけたらしい。状況が良い方向なのか悪い方向なのかはユールの顔色から判断するしか無い。しかし、ユールは考え込んでいる様だった。どうやら、芳しいとは言い辛い状況の様だ。悩んでいたユールの出した結論は、予想通りというか、俺の期待を裏切るものだった。
「やはり、彼らと接触してみるしかなさそうですね。」
「彼らとは、盗賊団ですね。」
ルナが確認して欲しくない事を淡々と確認した。ユールは無言で首を縦に振った。
馬車が動き始めた。ユールは飛び乗り、ルナは御者席に戻った。
「近付いてくる人は全部で五人、林の中を移動しています。盗賊団の可能性九十七パーセント。接触まで後一〇分。向こうがこちらに気付くまでの時間もほぼ同じです。車輪を変質させます。乗り心地が悪くなりますので気をつけて下さい。」
とルナが言うと、今まで静かだった馬車の車輪が、普通の馬車の様なごつごつとした木質系の音を立て始めた。さすがにこれは驚くしか無い。何が起きているんだ、一体。でも、本当の問題はそんな事では無い。これは、盗賊団に見つけてもらう為に態と大きな音を出しているのだ。俺は、いよいよ覚悟を決めて、フードを目深にかぶり、馬車の後方に移動して、腰を下ろした。
程なく、大きな声が聞こえ、馬車が急停止した。
「止まぁれぇ!!」
野太い男の声だった。
「おとなしくしろ、おとなしくしないと、馬の首を切り落とすぞぉ!!」
間違いない、盗賊団だ。
馬車の後ろから、刀の様なものを持った二人の男が馬車の中をのぞいていた。俺は、びっくりして御者席のユールに駆け寄った。
「馬車から降りろぉ!」
後ろの男が喚いた。ユールは、男達に負けないほど大きな声で
「おとなしくあなた方に従います。誰にも傷をつけないで下さい。」
と言い、御者席の下から杖を取り出すと、馬車から降りた。
ルナも同じように杖を持って、俺に、「ユールについて降りて下さい」と言い、自分も俺の後に付いて馬車から降りた。
「おい、大した荷物、積んでねぇよ。食料も殆どねぇ。大失敗だ。」
馬車の中から、甲高い男の声が聞こえてきた。
「くそ、馬車を間違えたか。」
「いや、昨日、港町にあった馬車はこの一台っきりだ。」
盗賊団の男どもは、しばらく話し合っていたが、馬を止めた大男が
「まぁいい、飯はまだ蓄えがある。それよりも、こいつら連れて行くぞ。」
と嫌らしい笑みを浮かべた。周りの奴らも嫌らしい笑いを浮かべている。そこへ、ユールが毅然と言葉を放った。
「どこへつれているのか判りませんが、この馬はルナの言う事しか聞きません。おとなしく付いて行きますから、私達に触れないで下さい。」
とフードを下ろした。
大男は、
「お前ら、自分たちの立場が判っていない様だなぁ。まぁいい、じゃぁ付いてきてもらおうか。」
と言って、ルナを御者席へ乗せ、一人の男がルナに刃物を突きつけ言う事を聞かせて、残り四人で俺とユールを囲んで歩き出した。
一五分ほど歩いたところに、馬車を隠せる獣道があり、そこに馬車を隠すと、馬を外し、少し離れた木に括り付けた。
さらに、山道を三〇分ほど歩いていい加減休みたいと思い始めたとき、突然、開けた岩場に出た。岩場の奥には、洞窟の入り口の様な岩の裂け目があり、その前に、先ほどから居た大男より一回り大きい大男が座っていた。その傍らには、巨大な刀が立てかけて有り、異様な雰囲気を醸し出していた。
「早かったっじゃねぇか。しかもお客さんも一緒かよ。」
座っていた大男が酒でも飲んでいるのか、何かを呷りながら立ち上がり、巨大な刀を手に取った。
「へい、頭。でも、めぼしい収穫はこの女くらいですよ。」
と声の甲高い男がユールの腕を掴もうとした。その途端、
「触るな!」
とユールが声を発し、腕を掴もうとした男が地面に転がった。ユールは、無表情にお頭と言われた男に話し出した。
「アナタに聞きたい事があります。お頭さん?」
「何だ。」
お頭は怒っている様だ。
「十日ほど前に旅の楽師と二人の踊り手がこの辺りに通りかかりませんでしたか?」
そんな事をしていると、岩の裂け目から、さらに多くの盗賊達が現れた。盗賊は五十人を超えた。お頭は悠然と
「ん~~?いたかなぁ?どうだ、お前ら、覚えてるかぁ?」
と不敵に笑いながら周りの盗賊に聞いた。すると、いやらしい顔をした一人の盗賊が
「あの、おいしく頂いちゃったおねーちゃん達でしょ。今は奥で伸びてますよ。なんせ、この一週間、俺たち全員の相手をしてるんだからなぁ。ケッケッ」
と笑った。お頭は、
「あぁー、あのかわいい声したねーちゃんたちかぁ。そうかそうか。ところで、楽師なんかいたかぁ?」
ととぼけた声で質問した。すると別の盗賊が、
「お頭が真っ二つにしちゃったあの男のことじゃないですかぁ?」
と答えた。
「あーーっ!いたなぁ。こいつで真っ二つにした野郎が一人なぁ。」
とぎらぎら光る巨大な刀を右手で持ち上げ、左手でぺちぺちと弄ぶと、それが合図であったように盗賊たちが一斉に笑い出した。
ユールは、しばらく我慢していましたというように間を置いた後、杖を軽く持ち上げ、「ドォーン」というすさまじい轟音とともに足元の岩盤に突き立てた。
突然のことに静まり返ったところにユールの美しいが怒気を孕んだ声が響いた。
「そんな『なまくら』では、人どころか鶏も真っ二つにはなりませんよ。」
その声に反応したのは盗賊団のお頭だった。
「なんだとぉ。」
「それに!」と、まだほかの人の発言を許して無いと云わんばかりの調子でユールが続けた。
「あなた方は、私が人間の所業の中で最も嫌悪している行為に手を染めてしまったようです。あなた方は、自分たちの行為の報いとして死よりも苦しいことがあることを知るでしょう。」
言い終わると同時にユールはもう一度杖を持ち上げ、岩盤に突き立てた。すると、杖の上半分が二つに割れ、中から束が飛び出してきて、杖の先端でくるりと回ると、心が澄み渡るような美しい長刀が姿を現した。
長刀は根元から先端に向けてわずかに弧を描いており、弧に沿って半分は鏡のように輝き、半分は銀白色に光っていた。
割れていた杖は刀を挟むように合わさると、刀を先端に付けた槍のようになった。いや、大きな薙刀といったほうが正しいかもしれない。しかし、杖だけで二メートルあり、さらに一メートル以上はあろうかという長刀が先端についているのだ、扱うには相当の膂力が必要になるだろうことは素人の俺にもわかった。
盗賊団のお頭は、相当頭にきているようで武器を構え、
「面白れぇじゃねえか。相手してやるよ。叩き切ってやるよ。」
と大上段からユールに切りかかった。
ユールの動きは、ゆっくり動いているのかと思うほど滑らかだった。薙刀をお頭の持つ大刀の根元に合わせ相手の動きを止めると、次の瞬間には薙刀を振りぬいていた。
ユールは鉄の刀を折ったのだ。いや、切ったのだ。
皆が、何が起きたのかかたずをのんで見守る中、お頭の大刀の刃が『ゴワン、ゴワワン』という音とともに地面に落ちた。音を聞いた俺は、「焼き入れもしてないのかよ。なまくら以前だな。」と呟いていた。
「こんな『なまくら』が何十本集まっても私たちには通用しませんよ。」
ユールは、明らかに挑発しながら、杖の先についていた長刀を取り外し杖を地面に突き刺し、長刀を左手に持った。
「おっ、俺たちの武器造りの努力を馬鹿にすんなぁ。」
盗賊団のお頭の喚き声に合わせて、盗賊団は一斉に俺たちに襲い掛かってきた。
俺は、怖くなってローブをしっかり被ってしゃがみこんだ。すると、隣のルナが、
「よい判断です。動かないでください。」
といった。途端、ローブの端が地面に突き刺さり、ローブが鎧のように固くなった。もう俺は、見ていることしかできなくなった。
ユールとルナの強さは圧倒的だった。数では圧倒している盗賊団だが、対峙して武器を振らせてもらえる者すらいない。盗賊団は一方的に切り伏せられていった。
盗賊団の半数が地面に転がった頃、洞窟の奥から二人の少女が引っ張り出されてきた。服はぼろぼろに破れ裸同然だった。体は汚れ、顔はひどく殴られたのか腫れ上がっていた。痛々しくて見ていられない。盗賊団のお頭が小刀を少女たちに突き付け、「動くな」というのが早いか、ユールは身に着けていたローブを少女めがけて投げた。投げられたローブは手裏剣の様にゆっくりくるくる回転しながら少女たちに向かって飛んでいったが、ユールはローブより早くお頭を捉え、切り倒し、離れた場所で次の盗賊を切り倒している頃、ローブは座り込んでいた少女たちに優しく覆いかぶさった。
ユールはゆうに十メートルはある間合いを一瞬で詰めてしまう。動きが滑らかで優雅で速さを感じさせないので、近づいてきたと思った時にはすべてが終わっているのだ。
盗賊団は、為す術も無く全員地面に転がることとなった。五~六十人はいた盗賊団の退治は三分とかからなかった。
最後の一人が地面に突っ伏す前に俺の着ていたローブは普通のローブに戻っていた。約束通り、俺は怪我ひとつしていなかった。というか、怪我すらさせてもらえなかった。俺とユールとルナは少女たちに駆け寄った。少女たちは気を失っているようだった。
「ルナ、ユニコーンの角を四本。」
「すでに用意できています。」
ルナの声に合わせて、地面からユールやルナが普段持っている杖と同じものが四本生えてきた。
先文明の技術なのか今日はぎょっとすることが起きすぎてもうどうでも良くなってきて、俺はそのまま見守ることにした。
ルナが杖を一本取ってユールに渡すと、ユールは少女の一人を寝かせて杖を少女の体に突き立てた。すると、杖がゆっくりと少女の体の中に溶けていく。
「なっ」
さすがに声を出した俺に、ユールは説明するように話し始めた。
「これは、私が自分の意志で使うことのできる唯一の奇跡なのです。この少女たちが経験してしまった悲劇を自然の記憶を使って無かったことにします。つまり、経験する前に戻します。」
「えっ。どうやって?」
「方法は説明できません。しかし、結果は説明できます。私とルナ以外のすべての物の記憶からこの子たちの経験した悲劇の記憶が消されます。そして、それによって生じる世界のゆがみはこの子たちに苦痛を与えた盗賊たちがすべて引き受けることになります。盗賊たちは死ぬまで覚えていない罪の贖罪のために消えることのない苦しみを味わうことになります。」
説明が終わるころ、一人目の少女に二本目の杖が溶けきった。ユールはすぐに二人目の少女も同じように横たえ、杖を溶かしていった。
やがて、二人の少女から虫の様な何かが湧き出し盗賊達に向かって行っては溶け込んでいくという奇妙な光景が繰り広げられ、それと同時に少女の顔の腫れがひいたり、破れた服が元に戻り始めたり、まるで怪奇現象のようなことが起こった。しばらくすると、二人の少女の胸から一匹ずつの蝶が飛び立ち、俺のおでこにとまった。その瞬間、俺は意識を失った。
「タケル、起きてタケル。」
ユールの声で俺は目覚めた。
「あれ?」
周りを見回して状況を確認し始めた。盗賊たちが転がっている。俺は・・・気を失っていたのか?
「気を失ったようですね。ここはまだ危険なので早くこの娘達を連れてここから離れたいのですが、手伝ってもらえますか。」
ルナの感情のない声が俺を急速に現実に引き戻した。
「そうだ、この娘たち大丈夫だったのか?ひどいことされたんじゃ。」
と言いかけると、ユールは一瞬つらそうな顔を見せたものの、
「この娘達は大丈夫です。」
といって二人の少女の髪を撫でていた。
確かに、服に乱れはないし、気を失っているようだけど顔色もいい。大丈夫そうだ。
俺とユールは少女を一人ずつ抱きかかえて馬車まで急いだ。
盗賊たちは死屍累々といった感じで転がっていたが、ユールは「死んではいません。皆、峰打ちにしています。」といっていた。確かに誰も血を流していなかった。
馬車もカストゥルとポルックスも無事だった。
急いで少女たちを馬車の中に寝かせ、馬車を王都に向けて走らせた。
後から聞いたのだが、俺が気を失っていたのは三分ほどだったらしい。
気が付いた盗賊が報復にやってくるのではないかと心配した俺に、ユールは理由は教えてくれなかったが、「その心配はない」とだけ言った。ルナは私をなだめるように
「彼らは、今、それどころではない大変な状況になっているはずです。」
と、納得できるような納得できないような説明をした。
少女達が寝ているので、馬車をあまり急がせることはできなかった。その為、王都に着いたのは夜中だった。
王都は何万人もの人が生活していて、とにかく広い。大きな橋を渡り、最初の家が見えて「王都に入りました。」と言われてから宿屋につくまで二時間はかかったのではないだろうか。兎に角、ここまでくればもう安全だろう。
宿屋では、主人が待ち構えていて、少女たちを抱きかかえた俺たちをすぐに部屋に案内してくれた。部屋は、確かに広かった。最初の部屋は大きなベッドが二つある十五坪ほどの部屋で、左右にベッドが二つある十坪ほどの部屋と大きなベッドが一つある八坪ほどの部屋が付いていた。
俺たちは十五坪の部屋に二人の少女を寝かせた。そして、馬車とカストゥルとポルックスの世話をして戻ってきたルナに少女達の世話を任せて、翌日に備えて休むことになった。
ユールは大きなベッドで一緒に眠りたいと主張したが、疲れていることを理由に何とか納得してもらった。それでも同じ部屋で寝ることには妥協した。
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- 2013/03/20(水) 18:22:19|
- 再生した地球にて
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年度末が近付いて、皆様もいろいろと忙しことと思いますが、
私も、何かと忙しく、
久しぶりにお昼に会社の自席に座っているのです。
外出メインの日々、皆様いかがお過ごしでしょうか?
では(^^;/~~~
- 2013/03/14(木) 12:49:23|
- つれづれ日記
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気が付いたとき、俺は、温泉に持って行った着替えを着せられて焚き火の横に横たわっていた。
「本当にどうしょうも無いヘタレですねアナタは。」
ルナの痛烈な言葉が突き刺さった。
「気が付きましたか!!よかったぁ。」
ユールはとことん優しかった。
どうやら、ユールの胸を触っていると認識した俺は温泉で良い具合に逆上せていたのも相まって鼻血を出して気絶してしまったらしい。
その後、ルナが俺の手当てをし、服を着せて、ユールがお姫様だっこで焚き火のところまで運んでくれたんだという。
「俺の・・・男としての尊厳って・・・」
「有りませんね、そんなもの、ヘタレですから。」
ルナはきつかった。でも、ユールは優しかった。俺はもう元気だったが、水を持ってきてくれたりおでこに乗っていた手ぬぐいを濡らして顔を拭いてくれたり、とても献身的だった。
夜も遅くなったので、そのまま寝る事になった。ユールはまた俺の隣に来て毛布にくるまった。俺は何となく嬉しくてニコニコしてしまった。
ルナは相変わらず、不寝番を買って出た。火を焚いているだけで野生の動物はまず近付いては来ないらしい。怖いのは人間だと言っていた。
俺は、星の下で、お風呂作りに挑戦してみる事とか色々どうでも良い事をユールに話しながら、気が付いたら寝ていた。
朝起きると。ユールはまだ毛布にくるまっていて、ルナが朝ご飯を作っていた。
「おはよう」
と俺が挨拶すると、ユールの毛布がピクッと反応したような気がしたが、挨拶はルナからしか帰ってこなかった。
「おはようございます。今日の朝ご飯は、昨日の晩と一緒で良いですか?卵を落とすので少しは変わりますが。」
「うん、昨日の晩ご飯も美味しかったもんね。」
「ユールは毎食違うご飯を食べたがるんですが・・・正直私はまだその辺は判りません。美味しければ毎日一緒でも良いと思ってしまうので・・・」
ルナからそんな話が聞けるなんて初めてだ。あまり自分について喋らないから。でも、今回のは昨日と同じものを出す言い訳かな?
「毎日一緒はさすがに飽きると思うけど、二~三日なら同じでも大丈夫かな?」
俺は、気にせずに返事する事にした。すると、ルナは
「ユールの手を握ってあげて下さい。ユールはこういう日はなかなか目を開けてくれないんです。」
と言った。突然話が変わったのと、意味不明な内容に混乱していると、
「ユールはもうだいぶ前から起きているのですが、毛布から出てこようとしません。手を握ってあげて下さい。普段は私がしてあげているのですが、アナタの方が効果があると思います。」
「・・・手を・・・握ってあげれば良いの?」
「それだけで多分大丈夫です。」
ルナの顔に感情は感じ取れなかったが、言う事に従ってみた。
ユールは頭から毛布をかぶっていた。両手は胸元でしっかり毛布を握りしめていて、何か怖いものから隠れているかのように微かに震えていた。
俺は、毛布の中に手を入れて、どうにか右手を見つけると両手でしっかり握りしめ、
「大丈夫、怖くないよ。」
と話し掛けていた。
「大丈夫。大丈夫だよ。」
と言うと、ユールはゆっくりと顔を毛布から出して両目を閉じたまま俺が握っている右手を自分の頬に持って行き俺の手の甲で自分の頬を撫でるようにした。でも、まだ怖いと言うように俺の手を力強く握っている。
俺は、顔を近づけて、もう一度
「大丈夫だよ、怖くないよ。」
と言った。
突然、ユールは俺の首にしがみついてきた。そして、
「恐いの。雲一つ無い空が、私を吸い込もうとするの。」
と、まるで幼い少女の様な震えた声で訴えてきた。俺は、ユールを両腕でしっかり抱きしめながら
「俺が抱きしめてるんだ、吸い込まれたりさせるもんか」
と言った。
ユールは力一杯しがみつきながら不規則な息をしていたが、もう一度、「大丈夫、俺が居る。」と言うと、ゆっくりとした呼吸に戻り、身体を離した。まだ目を閉じたままだったので、抱きしめなきゃと思った俺は、腰に手を回し、しっかり抱きしめた。
ユールの瞼には涙が光ってた。その瞼が俺の目の前で僅かに震えた後、ゆっくり開いた。
「おはよう。」
俺は、多分、自分が出来る最高に優しい笑顔で挨拶した。
ユールは、先ほどまでの真っ青な顔とは打って変わって少し赤みの差した顔で恥ずかしそうに
「おはようございます。」
と挨拶した。
ユールは死ぬのも恐くは無いけど、朝起きたときの空が雲一つ無い空だと恐くて起きられなくなってしまうんだと恥ずかしそうに教えてくれた。
確かに、昨日の夜も星が綺麗だった。でも、今朝は山の天気とは思えないくらいの抜ける様な青空だった。まさに雲一つ無い秋晴れだ。
ユールは宇宙で生活していた事もあるらしい。そこは空気も重力も無く、飛んで言ってしまうと何かにぶつかるまで飛び続け、助けが無ければ自力ではまず生き続けられない死の空間だそうだ。ユールはそんな宇宙空間も恐くは無かったという。しかし、地球に降りてきて地球の重力を感じた後、空を見上げたときに雲一つ無い空に自分が吸い込まれる様な感覚に陥り大変な恐怖を感じたと言う。それ以来、雲一つ無い空はどうしようも無く恐いらしい。それでも、起きているときなら自律心も自制心も働くが、朝起きた直後に目に飛び込んでくると、もうどうしようもないのだと言った。
「俺も、空を見上げるのが恐かった時期があるなぁ。」
俺たちはまだ抱き合っていた。
「そうなのですか?」
「ああ、丁度、あの飛行機で降りた草原でね、寝っ転がって空を見上げたら、心が身体から離れて空に吸い込まれるんじゃ無いかと思って、慌てて生えている草にしがみついちゃったよ。あの頃はまだ子供だったなぁ。」
「タケルもこの感覚を経験した事があるんですか?」
その時、ルナが呟いた。
「まさに『不来方の お城の草に寝転びて 空に吸われし 十五の心』ですね。思春期には良くある心象の様ですよ。今の歌は先文明後期の石川啄木という方の詩です。」
ユールは慌てたようにルナに這い寄り、
「それで、みんなはどうやってその恐怖を克服するのですか?」
と、懇願するように問いかけた。
ルナは、とても残念そうに、
「大人になるにつれて、その感覚は失われていくようです。」
と応えた。
ユールは、無人島に取り残され、助けの船に見つけてもらえなかった少女のように項垂れた。
俺は、二人の会話の意味するところを理解するのにかなりの時間を必要とした。
時間が解決してくれるなら良いじゃ無いか、と単純に思ってしまったのだ。しかし、現実は違ったのだ。正確には分からないが、ユールは少なくとも三百年前にはここに居たのだ。三百年経っても変わらない状況を時間が解決するとは思えない。つまり、ユールにそこまでの恐怖を与える心象は消える事が無い。それを受け入れて他の方法でその恐怖を乗り越えなければならない。そう、宣告されたのだ。しかも、普通の人はそれが恐怖であったとしても一時的なもののだ。俺は、かける言葉さえ思いつかなかった。先ほどまでのユールのぬくもりが、尚更、俺の胸を締め付けた。
やがてユールは、小さいけどしっかりした声で
「とりあえず、諦めて前へ進みましょう。」
と言った。そして、首を二、三回左右に振った後すっくと立ち上がった。
「ありがとうございます、タケル。もう大丈夫です。心配かけました。」
と、見返る格好でお礼を言った後、ルナの作りかけのひっつみを手際よく完成させた。
ユールがただの少女では無い、その奥底にある強さを垣間見た気がした。
「今日は、昨晩と同じ料理ですが、フワフワの溶き卵入りです。」
「私が考えたんですけどね。」
ユールとルナの掛け合いはちょっと面白かった。
卵の入ったひっつみは晩ご飯の時とはまた違った味わいがあって美味しかった。
今朝は洗い物が少なかったので樽の水で洗い物をした。朝の身支度も樽の水で済ませた。ついでにと、ルナは樽の水を全部捨てて川まで汲みに行って来るとつげて樽を背負子で背負って降りて行ってしまった。
二人きりになったところで、ユールが今日の目的地について話し出した。
「今日の目的地は港町です。そこには今でも漁村があります。でも、町は丘の上にあって、漁村とは行っても漁師小屋が何軒か有るだけで誰も住んでいません。この辺りは外海なので津波が来る事があるんです。」
「津波?」
「ええ、津波と行って、海が盛り上がって村を襲った事があるんです。この三百年で二回ほどでしょうか?」
「そうなんだ。津波を除けて丘の上の町で生活しているんだ。」
「はい、元々、早瀬川の町ももっと海側にあったのですが、津波を経験して山側の平地に移動したんですよ。その御陰で海から結構離れてしまいましたが・・・」
「うん、海まで歩いて二時間はかかるね。夏の暑い日は海水浴に行ったりするけど。」
「ええ、港町は海までそんなには離れていません。そのため、海で漁をする人たちが今でも結構居るんです。丘の上には田んぼも少しはあって食べ物は豊富です。新鮮な海の幸が食べられる数少ない町です。」
「へぇ、でも、新鮮って言っても、煮たり焼いたりするならそんなに新鮮かどうかって関係ないんじゃ無い?」
「海の魚は生で食べられるんです。寄生虫などをあまり気にする必要が無いんで。」
「生?生の魚?うへぇ」
さすがに、生の魚は想像出来なかった。食べた事無い。
早瀬川の町では魚は主により近い湖や川の魚で生で食べると危ないと言われているので皆火を通すのだ。
「お刺身や白子の躍り食いと行って生きたままの小さな魚を丸呑みにする人も居ます。」
「だめだ、想像も出来ない。」
何となく辟易としてしまった。あれ、さっきから港町って言ってるけど、
「そう言えば、港町って言う名前の町なの?」
「はい。そう呼ばれています。今、ちゃんとした港があるのは王都と港町だけです。まだ、木で大きな船を作れる職人が居ませんからね。」
「へぇ、じゃぁ何の為に港があるの?」
「今は、漁港として小さな船が使っています。魚を捕りに行く船の為の港ですね。」
「成る程。」
子供の頃から港町のことは聞いていたけど、本当に港町という名前だったのにはびっくりした。生の魚というのにもちょっと興味はあるが、怖さ半分だ。
文明が衰退していく中で失われた料理も結構あるんだろうな。醤油や味噌は日本の家庭ならだいたい誰でも作れるけど、三百年前は作れない家の方が多かったらしいし、生っぽい魚は冬に港町から仕入れてくる新巻鮭くらいだ。新巻鮭は殆ど焼いて食べるけど、生でも食べられない事は無い。ただし、塩の代わりと言っていいくらいしょっぱい。焼くにしても塩抜きをしてから焼くくらいだ。
生で食べられるものと言えば、牛肉だ。年に何回か牛をしめるのを手伝うと、生で食べられる新鮮な牛肉をもらえる。でも、半日したらもう焼かないと危ない。牛肉は滅多に食べられないまさにご馳走なのだ。
鶏肉は生だと危ない。卵も良く火を通して食べる。
こう考えると、俺の町で生で食べられるのは本当に牛肉くらいだな。
そうこうしていると、ルナが樽を担いで帰ってきた。カストゥルとポルックスを呼んで出発の準備が始まった。
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- 2013/03/02(土) 03:15:37|
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